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〖 IDOLiSH7 〗 なないろパレット

第1章 輝きの外側へ


万「コーヒー、飲めるようになった?」

キッチンでお湯を沸かしながら、万理がイタズラっ子のように微笑んでいる。

『···お砂糖とミルク、たくさん入れたヤツなら』

万「それはもう、コーヒーとは言えない物体だな。その辺も、変わってないな···愛聖は、あの頃のままだ」

『変わって···なくは、ないよ』

言いながら、自分の体で仕事を取ろうと思っていた事を思い出し、膝を抱えて小さくなる。

万「何があったのか話す前に、ほら···まずはお腹いっぱいになろう。とは言っても、たいした物はないんだけどね。それにご飯はレンジでチンしたやつだし、味噌汁はインスタントだし」

そう言ってテーブルにいくつかのお皿が並び、割り箸を手に握らされる。

『ご飯と、コーヒーのコラボレーション···』

万「いいからいいから。あ、ちょっと先に食べてて?」

『いた···だきます』

事務所をクビになってから、湯気が立つような食事は食べてなかったから、温かい物に口を付けるとじわりと視界が滲んだ。

万「そんなに感激されると、心が痛いんだけど?それとも、涙が出ちゃうほど口に合わない?」

なんて返したらいいのか分からなくて、ただただ首を振った。

万「でも、これは特別だからね?はい、甘~い卵焼き。愛聖、好きだっただろ?」

目の前にコトンと置かれたお皿には、焼きたての卵焼きがキレイに並べられていて、また涙が零れた。

万「感激するのは食べてからでも遅くないよ?ほら、食べないなら俺が全部食べちゃうぞ?」

『···それはヤダ』

鼻を啜りながら言うと、ポンッと頭に手を乗せてから万理も箸を持った。

静かな空間に、温かい食事。

誰かの気配。

たったそれだけの組み合わせが、幸せだと感じてしまう自分に少しだけ悲しくなりながらも、少しずつ満たされていくお腹に···一人で食べる食事とは違う気持ちの味付けを感じていた。

食事を終えると、せめてものお礼にと食器洗いをして、また、テーブルに向かい合って座った。

何から話せばいいのか、どう話せばいいのか何度も躊躇いながら口を開こうとして、閉じた。

万「話したくなければ、俺も無理には聞かない。ただ、ひとつだけ教えて?···どうして、あんな所を一人でフラフラと歩いていた?」

『それは···』

万「あ、待って」







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