第1章 輝きの外側へ
❁❁❁ 小鳥遊音晴side ❁❁❁
紡「お父さんのスマホ、さっきメッセージ音してたよ?」
風呂上がりにリビングへ行くと、パソコンと向かい合っている紡が教えてくれる。
「教えてくれてありがとう、紡」
普段事務所内では流石に娘扱いは出来ないから、紡くん、と呼んではいるが。
ここは、自宅。
誰に気兼ねするでもなく、亡き妻の面影を残す愛娘の名前を呼ぶ。
面影というより、若い頃の結にそっくりさんなんだけどね。
「紡、あんまり頑張り過ぎるのはよくないんじゃないか?ほら、ココにシワが寄ってるよ?」
ツン、と眉間をつついて笑えば、早くみんなの役に立ちたいからと苦笑される。
「何事も、程々にしないといけないよ。それに、家に仕事を持ち帰っては、体が休まらないだろう?」
紡「その言葉、そっくりそのままお父さんにお返しします」
あはは、こう言う返し方も···結にそっくりだ。
「なるべく早めに休む事。分かった?それから、きなこはちゃんとゲージに入れるんだよ?」
紡「分かってるってば···私そこまで子供じゃないよ」
「お父さんから見たら、紡はいくつになっても子供だよ」
お父さん!と叫ぶ紡を残し、自室へと足を運ぶ。
さて、と。
メッセージは誰からかな?···っと、やはり彼からか。
❮ 社長、本日の業務は全て終わりました。戸締りもしっかりしてありますのでご安心下さい。明日の社長のご予定は午後からになりますので、どうぞそれまではご自宅でゆっくりお過ごし下さい。自分の出勤時間は午前10時になりますから、それまでに何かありましたら連絡が取れるように準備はして置きます。 大神 ❯
···毎日、マメだな彼は。
まぁ、そういう所が彼の真面目さを示しているんだろう。
とある理由から見つけた逸材ではあるけど、流石に万理くんに秘書や事務仕事全てを頼りっぱなしなのは申し訳ないな。
彼は僕以上に朝から夜まで働き詰めだ。
そうだ。
万理くんは明日、遅めの出社だと書いてある。
そして僕の仕事は午後から。
それなら折角だし、たまには二人でゆっくり仕事の話は抜きのモーニングでも一緒にどうだろう。
うん、いいね。
いま連絡したら畏まってしまうだろうから、これは朝になったら連絡入れるとしよう。
ひとりニコニコと頷きながら、部屋の明かりを落とした。