第4章 カケラの眩しさ
❁❁❁ 一織side ❁❁❁
リビングの椅子の上に綺麗に畳まれた洗濯物を見て、これは誰が?と思考を巡らせる。
まるでショップに陳列されている商品のような、という例えがピッタリとハマるような。
それに···そこからふわりと漂う香りも、普段から使われている柔軟剤の香りとは少し違って。
花々しい香りというか、女性らしい香りというか。
そう言えば、さっき佐伯さんとすれ違った時に同じような香りが···いえ、別に常日頃から香りを感じ取っている訳じゃありませんが。
『あの···一織さん?洗濯物とにらめっこして、どうかしましたか?』
キッチンカウンターの向こうで洗い物をする佐伯さんが手を止め、不思議そうな顔をして声を掛けてくる。
「別ににらめっこではありません。ただ、今日は洗濯物のたたみ方がいつもと違うし、それに香りも···」
1番上のシャツを手に取り顔に寄せれば、やはり佐伯さんと同じ香りがして。
『ちょっと事情があって、今日は私が使っている柔軟剤でお洗濯したんですけど···お気に召さないですか?』
「そういう事ではなくて、」
『あ、大丈夫です!七瀬さんのは普段と同じ物で洗えましたから』
「だから、そういう事ではなくてですね···いい香りだと思ったんですよ、柔軟剤の香りが」
柔らかで、大人しい感じの優しい香り。
まるで···
環「あ、いたいたマリー!ナギっちが着替え終わってから変なこと言ってる!」
『変なこと?』
ナ「NO!ヘンな事ではアリマセン!着替えをしたら、マリーの香りがすると言っただけデス!まるで···マリーに抱きしめられてるような気がシマ~ス!」
···私が考えた事が六弥さんと同じとは、何とも言い難い複雑な気持ちがします。
環「いおりん、変な顔してどうした?」
「なっ···変な顔とは失礼ですね!私は至って普通の顔です!」
ナ「イオリ?洗濯物を握りしめてどうかしましたか?まさか···イオリもマリーに抱きしめられたいと思ってマスか?」
「違います!···はぁ、もういいです。部屋に戻ります」
少しだけ跳ねた胸を押さえながら、抱えた洗濯物の香りに翻弄される。
まったく···明日はこのシャツを来て学校へ行くのかと思うと、心臓が持ちませんね···