第4章 カケラの眩しさ
絡めた指に唇を当て、百ちゃんが私の頭をぽんっと撫でた。
百「約束、絶対だからね?じゃ、向こうの騒ぎはオレが引き受けるから···気を付けて帰りな?」
まるでこれが撮影なんじゃないかと思えるような、いつもの百ちゃんとは違う雰囲気に···こっそり笑う。
『百ちゃん、それ···もしかして千のマネ?』
百「えっへへ、バレた?!バレちゃった?!う~ん、まだまだユキには遠いなぁ!···じゃ、約束だからな!」
それだけ言うと百ちゃんは路地から大通りに出て、まだ百ちゃんを探していた人達の前に姿を現し人目を引き付けた。
どんな時でも、いつでも味方になってくれている百ちゃんに心の中でありがとうを言って、私はそっとその場から立ち去った。
寮までの帰り道、時々チリッと痛む擦りむいた膝を見てはため息を漏らし、傷跡が残らなければいいな···とか、そんな事を考えながら歩く。
挫いた足は痛みが増していき、帰ってから何とかすればいいか、と時々足を止めながらもゆっくりと帰った。
まさか、ちょっとした使いパシリの買い物へ出て百ちゃんに会ってしまうとは思ってなかった。
撮影スタッフから声を掛けられてしまった事や、成り行きで名刺を渡された事はきちんと小鳥遊社長に報告しないとダメだよね?
今日、社長は事務所にいるだろうか?
外出していれば、事務所に戻ってから時間を貰ってちゃんと話そう。
それより、何より先に私のやるべき事は!
洗濯!洗濯!···それから掃除!
まずはそこからスタートしないと終わらない!
二階堂さんには缶ビールをしこたま振ったあとに手渡そう。
···ついでに頼まれた、グリーンの柄の歯ブラシを添えて。
あ、間違えたフリして私が買い置きしようと一緒に買ったピンクの歯ブラシでもいいかな?
そしたら、どんな顔して受け取るんだろう?
レジ袋の中を覗き見てクスリと笑いながら、寮まであと少しの道のりをゆっくりと歩いて行った。