第4章 カケラの眩しさ
百「マリー。立ち上がったらさ、ずっと下向いてろよ?あとはオレに任せて」
耳元でこっそり話す百ちゃんに頷き、2人でゆっくりと立ち上がった。
擦りむいたヒザと、多分···挫いたんだろう足首がピリっと痛むけど、それは言わないでおこう。
「やっぱりRe:valeの百だ!!」
「百ちゃんコッチ向いてー!!」
百「みんなー!撮影に協力してくれてアリガトー!今のがどこに使われるか楽しみに待っててね!···あ、でもオレちょっと失敗しちゃったからカットされちゃうかも?!」
···撮影?
百「じゃあ、まだこれから撮影あるからオレ達もう行くね~!愛してるよみんな~!」
バイバーイと百ちゃんらしく大きく手を振りながら歓声の中を走り抜ける。
さっき走って来た道を半分くらいまで戻れたところで、百ちゃんが立ち止まり建物の影に体を滑り込ませた。
百「マリー、聞きたい事や話したい事は山のようにある。けど、オレも今は撮影しててこのまま一緒にいる事が出来ない···だから、今オレと約束して?」
『約束って?』
百「約束してくれなきゃ、この手は絶対離さない」
今もまだしっかりと繋がれた手をチラリと見て、百ちゃんが普段はあまり見せない真剣な眼差しを向ける。
百「他の誰の電話も、取りたくなかったら今はそのままでもいいよ。だけど、オレがラビチャとか電話とかしたら···出てよ。もちろん、マリーがユキやあの3人に居場所とか知られたくないって言うならオレも黙ってる」
『百ちゃん···』
百「たださ、ちゃんと分かって欲しいのは···ユキも、TRIGGERのみんなもマリーの事を凄く心配してるってコト」
いつもニコニコして、こんなに真剣な顔で話なんてしない百ちゃんからの言葉が胸に刺さる。
後ろめたい事がある訳じゃない。
だけど、まだ···いまは。
···話していい時じゃないと思うから。
アイドリッシュセブンみんなの事も。
小鳥遊社長の事も。
···万理の事も。
『分かった···百ちゃんと約束する。だから、』
百「うん、オレも約束するから。なるべく早く連絡するから、その時はちゃんと···だよ?」
百ちゃんらしくニカッと笑って差し出された小指に、おずおずと自分の小指を絡める。
百「ホントは送ってあげたいけど、今日は···ここで」