第4章 カケラの眩しさ
今ここで百ちゃんに捕まったら、きっといろいろ聞かれる事になる。
そしたら、みんなの事やいまの私の立場や···万理の事まで話さなきゃいけなくなる···それだけは、避けたい。
人混みを掻き分けながら走りながら周りを見て、確かここは···と思い出す。
あの日、万理と会った場所と同じ?
だったら、あの信号さえ渡り切ってしまえば百ちゃんを振り切れるかも知れない。
チラリと振り返れば、まだ百ちゃんは少しだけ離れた場所にいる。
今のうちなら···行けるかも知れない!
何も考えず、ただ自分の足元だけに目線を走らせながら駆けて行く。
あの信号さえ···渡ってしまえば!
そう思って全力で走り続けて来た足が止まる事を拒否せずに、振り絞って···走る!
百「バカっ!マリー!!···危ない!!」
叫ぶ百ちゃんの声と。
グンッと引っ張られて傾く自分の体。
流れて行く景色が、やけにゆっくりに感じて···
すぐ側で鳴り響くブレーキ音で、自分の置かれている状況が分かると途端にあちこちが震え出した。
百「何してんだよ、危ないだろ!···でも、やっと捕まえたよ···マリー」
肩で息をしながらも震える私の体を百ちゃんがギュッと抱き寄せ···閉じ込める。
その胸の奥からは早いビートで刻まれる鼓動が伝わって来て。
『百ちゃんの心臓···ドキドキしてる···』
そんな間抜けな言葉が出てしまう。
百「当たり前だろ!なんかもう、いろいろドキドキだってば!···はぁ、疲れた。こんなに全力で走ったのなんて、百ちゃん超久しぶりっ!」
額から伝わる汗を手の甲で拭いながら、それでもニカッと笑う百ちゃんは私を離そうとはしなかった。
『もう···少しで、振り切れると思ったのに···』
途切れる呼吸の合間に言えば、更に百ちゃんは笑った。
百「も···元サッカー少年百ちゃんの脚力ナメんなよ?でも···マジで疲れたぁ···」
『天下のRe:valeが、疲れたとか。さっきの人が言ってたよ?今をときめくRe:valeの百がいます!とか』
百「いや疲れるって!オレもう昨日よりは若くないからね!!」
昨日って、それ誰でもだよね?
百「そろそろ立てる?オレ達···何気に目立っちゃってる」
こっそり周りを見れば、確かに距離をあけて人が集まり出していた。