第4章 カケラの眩しさ
『歯ブラシですか?···二階堂さん、コンビニ行く時に買えばいいのに』
そう返すと、コンビニだと高いからドラッグストアで買って来てくれるとお兄さん助かるなぁ?なんて返される。
『···分かりました、買って帰ります。好きな銘柄とかあればラビチャで送ってください』
大「オッケー。じゃ、頼むわ」
通話を切ってすぐに、二階堂さんから銘柄はどれでもいいからブラシは普通の硬さので!と書かれたメッセージが届く。
これくらいならメッセージじゃなくてさっき言えばいいのにと思いながらもウサギさんが丸を描くスタンプを押して返信をした。
ついでにビールもね!と更に返信が来て、やっぱりビールも買うんじゃないですか!と返信すると、王様プリンがおかしな決めポーズをするスタンプだけが送られて来た。
とりあえず、ビールは2本くらいあればいいかな?とカゴに入れて歯ブラシを探してそれもカゴに入れる。
あとは柔軟剤か···
香りが強くないものって三月さんが言ってたけど、どれにしたらいいんだろう。
香りの見本、みたいのはあるけど···どれを嗅いでみてもイマイチよく分からない。
いろんな香りを嗅ぎ続けて、散々と迷いつつも···結局は自分が普段使っている柔軟剤と同じ物の詰め替えを買う事にした。
これなら香りの度合いは分かってるし、ダメなら七瀬さんの分だけは、先に洗ってまだ残ってる柔軟剤を使えば大丈夫でしょ。
あとは個人的に必要とする物をいくつかカゴに入れてレジへと向かう。
案の定ビールがカゴに入ってるせいで、レジのオジサマに成人してますか?なんて問いかけられ、運転免許証を提示して事なきを得た。
ま、仕方ないよね。
今日、一段とスッピンだし···
それにしてもさぁ。
本名で仕事してたのに、身分証を提示しても私が私ってバレないのは、やはりタレントの端くれとして···ちょっと悲しいなぁ。
歩きながらガラスに映る自分の顔を見て、ノーメイクで歩いてしまうほど女子力ないからか?なんて笑って。
三月さんが、日焼けでもしたら困るだろうが!って出がけに被せてくれたキャップを深々と被り直した。
このまま来た道を帰って行けば、さっきの撮影していた場所を通る事になる。
人だかりは、さっきほどじゃないにしても離れたココからでも分かる位はある。
また···早足で通り過ぎようと思ったのに。