第4章 カケラの眩しさ
❁❁❁ 一織side ❁❁❁
「四葉さん、そろそろ出ないと」
いつもより早めの朝食を終え、軽く談話していると時間は瞬く間に過ぎ···普段と変わらない時間にまで時計の針は指していた。
『あ、一織さんと四葉さん!お弁当忘れないで下さいね?今日は特別に万理の手作りですって!』
環「バンちゃんの?ニコニコしてっから、マリーが作ったのかと思った」
私も同じ事を思いましたが、ここは黙って置くべきでしょうか。
『私はムリかな?お二人の健康を考えたら、辞退します』
万「そうだね。オレもそう思うよ」
『万理!!』
つまり、佐伯さんの手料理は健康被害がある···という事ですね。
大事な事だから覚えておきましょう。
ニコニコしながら私達にお弁当の包みを差し出し、それを受け取ると佐伯さんが玄関まで着いて来る。
「あの、佐伯さんも今から外出の予定でも?」
『特に何も予定はないですよ?どうしてですか?』
「私達と玄関へ向かっているようでしたので、外出されるのかと」
靴を出しながら言えば、佐伯さんも自分のサンダルを出す。
『私、ちょっと憧れてた事があって。ぜひそれをやりたいんです』
環「憧れ?なにそれ」
『私ってひとりっ子で鍵っ子だったから、見送るとかなかったし。だから、学校組のお二人を出来る範囲でお見送りしたいな?って』
「かつてはメディアで活躍されていた人の憧れが、そんな日常的な事なんて、カワ···変わってますね」
『いいじゃないですか、別に』
ちょっと拗ねる感じがまた、カワイイと言うか···コホン···
環「んじゃ、行ってきます」
『行ってらっしゃい!四葉さん、居眠りとかダメですよ?』
環「してねーし」
いえ四葉さん、毎日の様にしてますよね。
「それでは、行ってきます」
『はい、一織さんも行ってらっしゃい!』
満面の笑みで言われると、ちょっと照れくさいですが···悪いものではないですね。
緩みそうな顔に神経を集中させながら玄関を出て歩き出す。
『行ってらっしゃ~い!!』
元気な声に振り返れば、佐伯さんが大きく手を振って立っている。
こんな朝もたまにはいいものですね、と口元を緩ませながら小さく手を振り返してみる。
それは角を曲がるまで、何度も何度も繰り返された。