第21章 ココロ、重ねて
朝から台本と睨めっこをしながら時間を見て支度をし、事務所で仕事をしているからと言う社長と落ち合い撮影所へと入ると、ちょうど同じくらいに現場に着いた龍と姉鷺さんと顔を合わせる。
姉「あら愛聖。アンタもいま着いた所なの?」
『こんにちは姉鷺さん、それから龍も。今日はよろしくお願いします』
龍「あはは、よろしくお願いするのはオレの方だよ愛聖。映画やドラマの撮影なんて、楽はともかくオレはあんまり経験ないか、痛っ」
少し困惑するようになんでオレが演者に選ばれたんだろ?と頬を掻く龍の背中を姉鷺さんがバシッと叩く。
姉「何言ってんの龍、アンタだってそこそこドラマ出てるじゃないの。これから先TRIGGERをバンバン売り出していくんだから、映画やドラマの撮影くらいモノにしなさいよ、まったく」
片眉を上げて言う姉鷺さんに笑いながら、それでも今日は宜しくね?と龍に言って、控え室の場所を聞こうとスタッフに声を掛ければ、少々不機嫌な顔をした監督が歩いて来るのが見える。
『撮影、押してるんですか?』
「すみません・・・何度もリテイクするシーンが多くて監督もちょっとイライラしちゃってまして。十さんや佐伯のシーンになったら呼びに行きますから」
龍は分からないけど、私って今日は撮影あったっけ?
顔合わせくらいの気持ちでって言われてたと思うんだけど?
他の演者さんの撮影は始まってるからとは聞いてたけど、私はその辺のことは何も聞いてないし。
いざとなれば衣装やメイクはここで揃ってるだろうから、特別心配しなくてもいい?・・・のかな?
社長の事だから伝え忘れがある事は考えられないし。
「おはよう佐伯さん、それから十くんも」
龍「おはようございます!今日は宜しくお願いします!」
『監督、おはようございます、あの、既に撮影でお忙しそうですね』
不機嫌顔を元に戻し私たちの前に来た監督に言えば、監督はそうなんだよなぁと苦笑を見せた。
「原作者が見学に来るってのもあるんだろうが、変に力入ってる奴らもいてね。そうそう、今日は顔合わせってなってるけど出来ればこの撮影所で撮れるところは撮りたいんだが・・・」
いいかね?と視線で話す監督に、私も龍も快諾する。
『台本は何度か目を通してありますし、リテイク重ねちゃうかもしれませんが頑張ります』