第20章 明かされた事実
そういうところも、きっとこの子の頑張りのお陰かも知れないねと、既に机に凭れて眠ってしまっている愛聖を見ながら社長は言った。
「社長、ひとつ・・・聞いてもいいですか?」
すぅすぅと寝息を立てている愛聖を見つめながら、社長に言えば、なにかな?改まって、と言いながらも社長が俺の言葉の先を待つ。
「前から少し、疑問には思っていたんですけど・・・どうして移籍した今も愛聖の、」
『ん~・・・・・・あれ、私いま寝ちゃってた?!』
愛聖の事を八乙女社長は気にかけているのか?と社長に聞こうとしていた所に愛聖が目を覚ましてしまい口を閉ざす。
『すみません・・・社長もお疲れなのに私こんな所で居眠りだなんて』
事務所の時計を確認して慌て出す愛聖に、社長は寝落ちてしまうほど疲れているのはキミも同じだから気にしないで?と笑いかける。
小「それより明日からも色々と忙しくなりそうだから、そろそろ寮まで送るよ。ドラマの顔合わせや、それに今日決まった映画の話だってきっと明日にはキャスト公開についての打ち合わせなんかもあるだろうし」
「遂に白紙が多かった愛聖のスケジュールが埋まり始めましたね」
小「これは本当にのんびり休みが欲しいって言われても、ごめん、ムリ!って僕が謝る日が来そうだね」
『今まで白過ぎたから、それを取り返すくらい働けたらのんびりな休暇をオネダリします』
まだ眠そうな目をパチパチと瞬きさせながら愛聖が欠伸を噛み殺す。
「社長、俺が愛聖を送るので社長はこのまま帰宅して下さい。俺なら明日は鍵開け当番じゃないし、そこまで早い出社じゃないので」
そう伝えると社長は、そう?じゃあ頼んじゃおうかな?なんて言いながらカップに残ったコーヒーを飲み干した。
もし、愛聖が目を覚まさなかったら俺は社長からどんな話を聞こうとしていたのだろう。
そんな少しのモヤモヤを胸に押し込めながら、社長が飲み終えたカップを受け取り、愛聖さんを宜しくね?と帰り支度をする社長に、お任せ下さい、と笑い返した。