第20章 明かされた事実
百「夢に向かって走り続けていて、でもそれが叶わないかも知れないと絶望した時に藁にもすがる思いで自滅を掴みそうになるのはオレにも分かる・・・分かるんだよ、オレも・・・マリーのしようとした事は間違ってると思う。けどさ、それだってマリーはちゃんと後悔して、反省してるから今ここにマリーがいるんだろ?オレたちの前に、ちゃんとここに・・・マリーはいるじゃん」
時折声を詰まらせながらも千にそう話す百ちゃんの背中にそっと手で触れる。
百ちゃんが言う自分の挫折しそうだった時は、きっと前に話していたサッカー選手を夢見てた時の事だと、それをいま私を庇う事で思い出させてしまった事に申し訳ない気持ちの反映でもあった。
千「モモはいつだって、僕が愛聖を怒るとそうやって背中に隠して庇う。それじゃいつまで経っても愛聖が反省しないだろ」
百「そうかも知れないけど、でもユキがそうやって怒ってたらオレが守らないとマリーは傷付くばっかじゃん!バンさんがいなくなってからマリーを守るいちばんの騎士になるのはユキじゃなかったのかよ!」
最後に大きく声を荒らげた百ちゃんを見て、千がハッと息を飲み目を伏せた。
千「そうね・・・モモの言う通りだ。ありがとうモモ、僕が道を踏み外さないようにいつも引き止めてくれて」
そう言って千は静かな呼吸を繰り返し、百ちゃんの後ろにいる私に手を伸ばし抱き寄せた。
千「怒鳴ったりしてゴメン。でも、これからはどんな事があっても自分を安売りなんてするな。何かあったら必ず僕たちに相談しろ。どんなに小さな事でもいい、わがままだって構わない。その為に僕は、いつも愛聖のそばにいるって決めたんだから」
耳に吐息が届く距離で話す千は、更にその距離を縮めるかのようにギュッと私を抱きしめた。
『千・・・話さなくてごめんなさい。それから百ちゃんも味方でいてくれてたのに黙っててごめんなさい。私が移籍するって決まった時ちゃんと全部話せていれば良かった。けど、そんな事があったって知られたら嫌われてしまいそうで・・・千たちには言えなかった』
千「僕たちにはって、他に誰か知ってるってこと?」
隠す必要がなくなった事実に、私は千の目を見て頷いた。
『小鳥遊社長と、アイドリッシュセブンの・・・みんな』