第20章 明かされた事実
愛聖の母親が急変したって連絡を受けた時、アタシ達よりも先に社長が駆け付けてたし?
それに今思えば社長は愛聖の母親の手を握って悲しげに微笑んでた。
きっと社長はあの女性の事が好きだったんじゃないかしら。
いいえ、好きだったのよ。
じゃなきゃあんな切なそうに看取ったり出来ないわ!
だって八乙女社長よ?!
日頃あーんな怖い顔して仕事の鬼やってるのよ?!
社長がアタシをお側に置いてくれてから、あんな表情なんて見た事ないもの。
・・・そんな相手が大事に育てた娘だから、きっと我が子のように面倒見てるのね。
我が子のように、か。
実はホントに社長の娘だったりして?
・・・・・・・・・それはないか。
だって社長の遺伝子満載だったら、愛聖があんな素直な訳ないじゃない?
楽を見れば一目瞭然よ!
まーったく楽ったら素直じゃないし、ひねくれてるトコあるし、天邪鬼だし!
・・・顔もそっくりだし!
きっと楽も年取ったら社長みたくなるのね。
社長みたいに?
あら・・・今のうちから唾でも付けとこうかしら?
なんて、ね。
アタシには王子様がいるからそんな必要はないわ。
「やぁね、アタシったら。って、なによアンタ達!いつからそこにいたのよ!」
自嘲して小さく笑って顔を上げれば、見慣れた顔が3つ並んで立っていることに気付き半歩引きながら順にその顔を見る。
龍「えっと、番組出演が終わったのにスタジオにマネージャーいなかったから」
天「そうそう。だからボク達はマネージャー不在のまま楽屋に戻る途中だったんだけど」
楽「こんな所で突っ立ってニヤけてるとか、職務放棄か?」
見られてた?!
「違うわよ失礼ねアンタ達!アタシはちょっと野暮用があって外してただけよ!全く、仕事終わったなら次の現場に移動するわよ!早く支度しなさい!ほら!」
社長への報告は後にして、今はTRIGGERの同行を優先しなくちゃ!
社長にTRIGGERのマネージャーを任命されたのはアタシなんだから、しっかり職務を果たさないとオンナが廃るってもんよ!
訝しげにアタシを見る3つの背中をグイグイと押しながら歩き、愛聖の事はあのマネージャーに任せましょ、と大きく大きく息を吐いた。