第19章 魔法のコトバ
漂う香りに引き寄せられるようにリビングのドアを開けると、キッチンにいつものエプロン姿の三月さんと、それから学校へ行くには随分と早いのでは?と思う一織さんの姿が2つ並んでいた。
『おはようございます、三月さん、一織さん。今日は学校でなにかあるんですか?随分と早いような』
後ろ姿の2人に声をかけると、ほぼ同時に私を振り返る。
三「おはよう愛聖。今日は愛聖が朝早いって聞いたから、朝飯ちゃんと食わせねぇとって、な?」
一「おはようございます。目が覚めてしまったのでそのまま起きてるんです。二度寝などしたら生活リズムが崩れますから。とは言っても、四葉さんはほぼ毎日ギリギリまで寝ていますが」
レードルでにこやかにお鍋をかき混ぜながらの三月さんとは反対に、一織さんは食器を用意しながらクールに言う。
『なんか、すみません三月さん。私だけが朝早い時は適当にコンビニでパンでも買って食べますから、次からは皆さんの時間に合わせて貰っても大丈夫ですよ?』
家事の大半は三月さんがしていると言っても、その三月さんだってアイドリッシュセブンのメンバーなんだからと言えば、三月さんはそうはいかないんだと笑った。
三「一織と環の弁当もあるし、それに愛聖、お前だってオレたちと同じように仕事してんだから、ちゃんと朝飯食っとかねぇとな?オレがのんびり寝てて適当な朝飯食われる位なら、オレはお前の為に早起き位してやるっての。お、今日も完璧だぜ」
鍋からひとすくいした物の味見をしながら笑う三月さんに、起きがけの胸が不意打ちをくらってトクンと鳴ってしまう。
三月さん・・・朝一番からのそのキュンキュン笑顔は反則です。
きっと三月さんのファンは、こういう三月さんの見た目とは違うギャップにも惹かれているんだと実感してしまう。
見た目とは違う?
あはは、なんだか聞かれていたら怒られてしまいそうな事を考えてしまった。
三「愛聖、いまなんかオレに失礼なこと考えてねぇか?」
『ぅえっ?!あ、いえいえ、そんな事は!』
三「その慌て方はクロだな?」
『なんか、すみません・・・その三月さんの可愛いエプロン姿でカッコイイこと言われたので、ちょっとキュンと来てしまったというか』
三「キュン、て」
『えっと、普段の三月さんとはちょっと違う角度で見えてしまって』