第19章 魔法のコトバ
バレてしまっているのなら、誤魔化すよりも正直に言ってしまった方がと話せば、三月さんはそれを聞いてフイっと横を向いてしまう。
『ホントごめんなさい!ちょっと起きがけに不意打ちを食らったというか、えっと、だからその・・・』
怒らせた?!もしかして言わない方が良かった?!と更に慌てれば、それを見ていた一織さんの目が優しく色付き小さく笑う。
一「大丈夫ですよ佐伯さん。兄さんはいま照れの真っ最中なだけです。怒ったりしてませんよ」
『照れ・・・?そうなんですか?』
三「違うっての!もういいから早く顔洗って来い!早くしねぇとマネージャーもそろそろ来ちまうぞ」
顔を背けたままで手のひらをヒラヒラとさせて言う三月さんの耳は、これ以上にないほど赤く染まっていて、一織さんもどこか楽しそうに、ね?と言うように私にアイコンタクトを送る。
『とりあえず紡さんをお待たせする訳には行かないのでダッシュで身支度してきます!』
まだ夜も明けきらないというのに紡さんに迷惑はかけられないと思い、せめて最小限の身支度をしておかねば!といつもの何倍速かで身支度をして戻れば、一織さんが配膳をしてくれたのか朝食が既に用意されていて、いつの間に来たのか紡さんも食事の準備のお手伝いをしていた。
紡「おはようございます、愛聖さん。今日は宜しくお願いします」
『おはようございます紡さん。こちらこそ宜しくお願いします。朝早いスケジュールだったのに本当にありがとうございます』
本来ならばMEZZO"の仕事だけの同行で、こんなに早い出勤じゃなかったのにと言えば、それはこの仕事をしていればいろんな状況がありますから大丈夫ですと笑顔で返された。
三「ほら2人共、そんな余裕な時間ないんじゃねぇのか?早く朝飯食えよ、マネージャーの分もあるから一緒に食っとけよ?この時間じゃまだなんだろ朝飯」
紡「すみません私まで。でも、ありがたくいただきます」
それじゃ食べましょうか?と向き合って、その場にいる4人でそれぞれ席に着く。
「わぁ・・・この卵焼き美味しい!」
口に入れた途端にふわりと広がる大葉の香りに思わず声が出る。
三「だろ?卵焼きに大葉?とか思うかもだけど、意外と合うんだぜ?」
三月さんか用意してくれた朝食は、純和風な、まるで旅館の朝食のように少しづつの料理が並んでいる。