第19章 魔法のコトバ
ここに来てから出演したドラマの話を思い出しながら、四葉さんが大丈夫だと言ってくれる。
『でも、それはちゃんと相手との距離感とか分かる役柄だったし、今回のはそうじゃなくて』
環「んじゃ、練習してみりゃよくね?」
四葉さんの突拍子もない発言に、思わず、はい?と首を傾げる。
環「だから、練習!目が見えない役なら練習すりゃいーだけじゃん!前にやったじゃんか、目隠しして俺らが誰か当てるゲームみたいなやつ!あれまたやればいーんじゃね?」
ちょい待ってて!と言って四葉さんがバタバタと部屋から出て行ったと思えば、どこから持ち出してきたのか手にタオルやハチマキのような布をもって戻って来ては、私の目を覆うように巻き付けて行く。
環「ここを、こーして・・・そんでもって、あ、マリーちょいここ押さえてて」
『え?あ、はい、こうですか?』
環「そ。ここで縛って・・・と。出来た!」
『あの、四葉さん?これだと私、なんにも見えないんですけど』
環「見えなくしてんだから当たり前だし。じゃあ、俺寮のどっかにいるから、マリーは頑張って俺を探してみて。じゃあなー!」
え、ウソ?!
『ちょっと四葉さん?!え?!ホントにいないの?!四葉さーん?!』
食べていたプリンの甘い香りを残して四葉さんはあっという間にいなくなってしまう。
『まさかこんな事に発展するなんて・・・』
いきなり実行って言われてもと四葉さんが結んだ結び目を解こうと後頭部に手を伸ばしてもそれはキツく結ばれていて解けない。
マジか・・・と、四葉さんみたいに呟いて、これは本人か他の誰かに頼まなきゃ目隠しは外せないと重い腰を上げる。
まずは、自分の部屋から出なきゃ話は始まらないよね。
何となく不安になりながらも両手を伸ばし、どうにか壁に辿り着くと、今度はドアから出ることを目標にたどたどしく足を運ぶ。
『寮のどっかにって、階段だってあるのに・・・四葉さん、ホント頼むからって感じだよ』
小さなため息と大きな不安を抱えながらも、まずはこの状況を何とかしないと!と壁に寄り添いながら一歩ずつを前に進んだ。