第4章 カケラの眩しさ
『ビールは苦くてちょっと···って事をお話したら、甘いのなら大丈夫?って。それで逢坂さんが気を使ってくれたみたいで』
私がそう言うと、二階堂さんはお子様にはビールの美味さはまだ分からないか、と笑った。
『それにしても···』
そう言ってキッチンにいる逢坂さんを見る。
大「なに?」
『あんな風にカクテルシェイカーを振る逢坂さんって、ちょっとカッコイイですよね。何だか別人みたいで』
大「おや?おやおや?」
『なんですか?』
ニヤニヤしながら私をじーっと見る二階堂さんにそう返せば、二階堂さんは眼鏡をキュッと指先で直しながらまた笑った。
大「なになに?もしかしてソウが気になっちゃってたりするの?」
『は?何言ってるんですか二階堂さん。別にそういう意味で言ったんじゃ···』
確かにスラッとした感じで線が細くて、いつも背筋がまっすぐ姿勢も良くて···優しいし、穏やかに笑って···
あ、でも四葉さん部屋を掃除してる時はちょっと笑ってなかったけど。
『でも、素敵な人だな···とは思いますよ?ここにいる皆さんはみんなキラキラしてて』
大「へぇ?んじゃ、例えば社長とかは?」
『えぇ、素敵な人だと思います。私は小さい頃に父を亡くしているので、もし生きていたら社長みたいな感じなのかな?とか』
父親の記憶なんてほとんどないから言える事なのかも知れないけど、もし···生きていたら、きっと社長と同じくらいの年齢だと思うし。
小「僕が、なに?」
『社長?!いつの間に?!』
私と二階堂さんの間にニュッと顔を出し、僕の噂話かなぁ?と笑う社長に私達は苦笑した。
大「ビックリさせないで下さいよ社長。ま、アレですよ。簡単にザックリ言うと、愛聖が社長の事が好きだって話です」
小「えっ?!本当?!」
『ザックリし過ぎですよ二階堂さん!!』
小「いやぁ、嬉しいなぁ。でも、僕の心には妻がいるから···なぁんてね?こういう仕事してると、嫌われても仕方ないって言う所もあるのに、好きでいてくれてありがとう、愛聖さん」
『は、ぁ··こちら、こそ?』
何だかおかしな方向へと向かう会話に、思わず会話尻が疑問形になってしまう。
大「あ、でも社長?愛聖はソウもカッコイイって言ってました」
小「カッコイイって、僕よりも?」