第1章 輝きの外側へ
❁❁❁ 万理side ❁❁❁
愛聖が落ち着いたのを確認して、どこか静かでゆっくり話が出来る場所を···と考えた末に、俺の家に連れて帰ることになった。
愛聖の事は昔から知ってるし、とにかく有名人である彼女を連れ回す訳にも行かないし。
ただ、俺がいま気を使わなければならないのは。
···マスコミだ。
こんな時間に、俺と二人でいる所をスッパ抜かれでもしたら、それこそ八乙女事務所から苦情が入り、小鳥遊社長に迷惑を掛けることにもなる。
それにしても、さっきの電話···
愛聖が言った名前は、確かにTRIGGERのメンバーの、だったよな?
いったい、どういう事なんだ?
小鳥遊社長に拾われてからも、千や愛聖の事はいつも追ってた。
テレビで見ない日がないと言っても大げさではない程の露出。
千は千の道を。
愛聖は愛聖の道を。
それぞれがまっすぐに進んで行く姿を、応援しながら。
だけどこの数ヶ月の間は愛聖を見る事がなく、どうしたんだろうかと思っていた矢先に、今日だ。
事務所へは帰りたがらないし。
数年振りに会ったと思えば、振り切っていなくなろうとするし。
ウソ、つこうとするし。
それは仕方ないか···100%信用されてる!とは言えないし、そういう疑念を持たせてしまったのはほかの誰でもない···俺だから。
あれからもう、どれだけの季節が過ぎたんだろう。
その頃の事を思い出す度に、胸が痛くなる。
忘れられない、忘れてはいけない···俺の、過去。
後悔していないか?と聞かれたら、なんて答えたらいいのか言葉に詰まってしまうけど。
だけど、あの時の俺がいるから···今の俺がいる。
それだけで、充分じゃないか。
「着いたよ。ここが俺の家」
手早く鍵を開け、愛聖の背中をそっと押して中に入れる。
「散らかってるけど、外にずっといるよりは雨風凌げてマシだろ?」
『雨も、風もないけど?』
「いいの、いわゆる例えなんだから。あ、スリッパいる?なくても平気だけど、いるなら出すよ?」
『平気···えと、お邪魔します』
どうぞどうぞ~と言いながら、俺もあとに続いて部屋に入った。