第1章 輝きの外側へ
❁❁❁ 天side ❁❁❁
ー ちょっと、天! ー
事務所の廊下を歩いていると呼び止められ、声からしてマネージャーの姉鷺さんだとわかる。
また面倒な人に捕まったな。
小さく息をつきながら振り返り、足を止めた。
姉「天、こないだから楽と龍がなんだかコソコソしてるみたいで変なのよ!なんか知ってる?!」
コソコソって···あぁ、あの事か。
でも別に報告する義務はないし、あの二人を庇うわけじゃないけど知らないフリをしておく方がいいだろう。
「特には、何も?何かあったんですか?」
我ながら、白々しいとは思う。
姉「あ、知らないんだったらイイのよ。まったく二人とも何してるのかしら!もう!」
「とりあえず二人に会ったら、マネージャーが探してた、とでも伝えておきます」
姉「あ、そう?じゃ、頼むわね?」
マネージャーはそう言うと、まだ仕事があるのか社長室の方へと歩いて行った。
佐伯 愛聖が社長からクビを宣言されて出て行った事は知っている。
そして、楽と龍がその行方を探しているということも。
それも、Re:valeの二人まで巻き込んで。
まだ、見つかっていないのか。
彼女には、まだ果たしていない約束がある。
それを果たす為にも、早く見つかってくれないと···困る。
何気なく取り出したスマホで彼女の連絡先を探してコールしてみる。
こんな電話掛けた位で繋がるなら、楽も龍もとっくに探し出してるだろに。
あと二回呼び出し音が鳴ったら切ろう。
1回···
2回···
···切るか。
耳から離し、切ろうとした瞬間に暫く聞いていなかった声が聞こえてくる。
『もしもし···』
涙声···泣いてるのか?
「九条、だけど···もしかして泣くほどボクからの電話待ってた?」
開口一番ダイレクト過ぎるかなと思いながらも、遠回しにするのも自分らしくないと思ってストレートに聞く。
「TRIGGERのマネージャーが楽と龍を探してる。居場所知らない?」
『天···ごめんなさい···』
「ちょっ···切れたか」
人の話も聞かずに切るなんて、彼女らしくない。
もう一度掛け直してみても、電源そのものを落としたのか繋がる事はなかった。
でもひとつ分かった事はある。
愛聖との連絡方法が、途切れてはいない···という事。