第17章 見えない未来
環「マリー、降りていいよ」
『え、あ、はい。ありがとうございました四葉さん』
ようやっと四葉の背中から降りる愛聖を見ながら、そういや確かここに入れたはずだとポケットを探る。
「愛聖、死ぬほど腹減ってんなら帰るまでこれ食って我慢しとけ。ほら、口開けろ」
ポケットから出した小さな個装をピリッと破り、キャラメルコーティングされた補助食菓子をつまみ出す。
『ありがとう。でも自分で食べれるから大丈、』
「いいから早く口開けろ。じゃないと・・・溶けてきただろ」
指先の温度でじわりと溶け出し、甘い香りを漂わせるそれを口元へ運び、食わないのか?と視線で誘う。
『えっと、じゃあ・・・』
躊躇いつつも愛聖が口を開け、そこに軽く押し込むように入れてやれば、その甘みが広がったのか、目を細めてもぐもぐと口を動かす姿に俺も表情が緩む。
『甘くて・・・美味しい』
「あぁ、確かに甘いな」
三「舐めた?!・・・ワイルド、なのか?」
指先をペロリとすれば、驚いて声を上げる和泉兄に二階堂が口角を上げる。
大「いやぁ、さすが抱かれたい男No.1のやる事はひと味違うっていうか?」
環「がっくん、俺も!俺もそれ食いたい」
・・・。
「ほらよ、お前は自分で食え」
同じものをポイッと投げ渡すと、それはそれでまた二階堂が目を光らせる。
大「あからさま過ぎて、お兄さん笑えないんだけど」
眼鏡の奥で・・・盛大に笑ってるだろうが!
一「佐伯さん、ちょっと動かないで下さい・・・取れましたよ」
『ありがとうございます、一織さん』
一「食べさせて貰った上に口を汚すだなんて、カワイ・・・コホン・・・小さな子供のようですね」
『うぅ・・・一織さんてば、手厳しい』
一「まぁ、それもあなたらしいと言えますが」
二階堂とのやり取りの向こうで、和泉弟が柔らかく微笑みながら愛聖の唇をハンカチで拭うのが見え、チッ・・・出遅れたか、と軽く眉を寄せる。
大「あらら~、うちのしっかり者に先を越されたようで?」
「・・・お前はいちいちうるせぇよ!」
俺を煽るように言う二階堂に一瞥をくれてやると、それすら楽しい事のように二階堂は笑い続けた。