第4章 カケラの眩しさ
逢坂さんの体の向こうで、ゴソゴソと四葉さんが着替える音がする。
と、いうより。
さっき叫んでしまったのは単に驚いただけで、別に四葉さんが下着一枚でって言う事だけじゃないんだけどな。
あれくらいなら今までだって、仕事柄いろんな人のを見てきたし···今更驚くことでもないけど。
ただ、さっきまで制服姿だった人が振り返りざまに下着一枚だったら誰だって驚くよ。
それにしても、いま他の誰かが部屋に来たら。
逢坂さんと私のこの状態って、ヤバくない?
どう見ても四葉さんの前で抱き合って···ちょっと違うか。
逢坂さんに抱きしめられてるようにしか見えないよね?
壮「環くん、ちゃんと服着た?」
環「ん~、もうちょい。まだ下履いてない···どれ履こうかな」
壮「どれでもいいから早く履いて。愛聖さん、申し訳ないけど、もう少し待ってあげて?」
『あ、はい。私は大丈夫ですけど···』
スッと緩む腕から顔を上げると、ほのかに漂ってくる香り。
逢坂さん···何か付けてる?
こう、なんて言うか、思わず目を閉じてしまいたくなるような···おしゃれな香りがする。
壮「愛聖さん、どうかした?あ、もしかして苦しい??」
ピタリと動きを止めた私に、そっと言葉をかけてくれる。
『大丈夫!そういうのじゃなくて、なんだか逢坂さんって、』
そこまで言いかけて自分でハッとする。
逢坂さんって、いい香りがする···とか言ったら、変な人だと思われちゃうよね?!
ちょっとだけ、スンって嗅いじゃった事バレるよね?!
···それだけは何よりも避けたい。
壮「え、僕?」
パッと体に隙間を開けて、逢坂さんは私の言葉の続きを待っている。
いや、だから言えないんだってば。
壮「僕が···なに?」
『あ~えっと、それは···』
壮「うん···」
『逢坂さんって···その、や、優しいんですね!って』
壮「優しい···?」
誤魔化すかのようにニコリと笑って言えば、今度は逢坂さんが無言で固まってしまった。
あれ···私なんか失敗した?
環「そーちゃん、着替え終わった···あれ?そーちゃん何で急に照れてんの?」
壮「···なんでもないよ」
微妙な空気で固まる私達に救いの言葉を掛けたのは、他の誰でもない···四葉さんだった。