第17章 見えない未来
岡「オーディション、ですか?」
『あ、すみません・・・なんか愚痴っぽい事ばかり話しちゃって。せっかくのお食事タイムなのに』
うっかり呟いてしまった言葉を聞かれてしまい焦りながら謝ると、岡崎さんはそういえば・・・と言いながら鞄から資料を出してパラパラと捲り始める。
岡「オーディション・・・オーディション・・・あ、あった!あのですね、これはまだ千くんたちにも話してはないんですが、あるんですよ連続ドラマのオーディション」
『そうなんですか?でも、千たちもまだ聞かされていないのに私が聞いちゃって大丈夫なんですか?』
岡崎さんが情報を持っているという事は、可能性があれば千や百ちゃんが引き受けるだろう仕事の事なのかも知れないしと加えて言えば、岡崎さんはその辺は大丈夫だからと内容を教えてくれる。
岡「ちょうどこの局の周年記念の連続ドラマで、これから各方面にオーディション開催事項を流すらしいんです。出演する役者をほぼ全員オーディションから選ぶという話題性の高い物で、これなんですが・・・佐伯さんも受けてみてはいかがですか?」
どうぞ?と資料の1部を渡されて、受け取るままにそれに目を通してみる。
岡「女性枠で、佐伯さんが配役されてもおかしくない役柄があるでしょう?難しい役かも知れませんが、もし選ばれたとしたらやり甲斐がある仕事だと思いませんか?」
説明される場所を読むと、ある女性が偶然知り合った男性と惹かれ合い恋に落ちるも、実はその男性は大企業の御曹司で、家柄の違いで反対されて引き離された後に愛する人の子供を授かっている事か分かり、シングルマザーとして生きていく・・・とか書いてあって。
『難しい役、ですね・・・確かに』
っていうか、結構複雑なストーリだけど・・・このドラマ。
この現代社会に、こんな出会い方をするラブストーリーってありなの?とも思うけど。
御曹司って言われても、なかなかピンと来ないのもあって。
脚本家は有名な人だけど、ちょっと変わってる事でも有名な人だし。
だけど、もしこの仕事に参加する事が出来たら。
そう思うと、詳しく話を聞いてみたいという気持ちの方が上回って行く。
岡「オーディション片っ端作戦とやらをするのであれば、その中のひとつに入れてみてはいかがでしょう」