第17章 見えない未来
寮に戻って数日経ち、スケジュールを埋める為に引き受けたバラエティー番組の撮影の為にテレビ局へ来ていた私は、アイドリッシュセブンの事で打ち合わせに参加しなくてはならない社長と別れ、1人で局の食堂で遅めの昼食を取っていた。
本来なら1人にならない為に社長に着いていく方が良かったのかなとも思うけど、さすがにそこそこ人がいる場所なら襲われる心配も攫われる心配もないから。
とは言え、やっぱり1人で食べる食事は寂しいかも・・・なんて思いつつ、エビピラフを掬ったスプーンをぼんやりと眺めては口に運んでいた。
「おひとりですか?」
不意にかけられた声に顔を上げれば、そこに立っていたのはよく見知った人で。
『岡崎さん!・・・ってことはまさか・・・』
岡「あの2人なら、NEXT Re:vale の収録中ですよ」
岡崎さんの姿に千や百ちゃんもいるのかと思えば、それを読んだのか岡崎さんがそう教えてくれる。
『番組収録中なのに、岡崎さんはここにいていいんですか?』
岡「今日は朝から忙しくて食事を取る時間もままならなかったので、千くんと百くんが今のうちにゆっくり食べておくようにって計らってくれたんです。そしたらここに佐伯さんをお見かけしたので」
食事を乗せたトレーを持ったままの岡崎さんに、もしお邪魔でなければご一緒しても?と聞かれて、私もひとりじゃ味気なかったのでと目の前の席を勧めた。
『岡崎さんが食事を取る時間もないくらい忙しい程、Re:valeに仕事があるって事は、私としては羨ましい限りです。こう見えて私、結構スケジュール空いちゃってて』
岡「でも、ここにいらっしゃるという事は今日はお仕事なのでは?」
『まぁ、今日のところはって感じです。八乙女社長や小鳥遊社長同席の立派な移籍会見をさせて貰ったのに情けないというか、もっと頑張らなきゃ!って思ってはいるんですけど、なかなか上手くは行かないのがこの業界ですね』
私の仕事の幅が狭いのも、逢坂さんのご実家であるスポンサー事件の事が多少なりにも理由のひとつだと思うけど。
そんな事より、ただ単に私の頑張りが足りないのが1番だと思うし。
それでもそんな厳しい状況の中を掻い潜ってCMなどの仕事を付けてくれる社長には感謝しても足りないくらいではある。
『またオーディション、片っ端作戦しかないかなぁ』