第16章 動き出した真相
❁❁❁ 楽side ❁❁❁
スケジュールの打ち合わせの為に事務所の一室に集められた俺たちは、特に会話を交わすこともなく姉鷺を待っている。
そんな時間の中でも俺は、あの夜に七瀬から聞かされた・・・アイドリッシュセブンの歌をTRIGGERが奪ってしまう形になった事や、それから数日前の愛聖の楽屋に何者かがまた侵入した事を考えながら、ぼんやりと窓の外を眺めていた。
いったい何の目的の為に。
いや、それは前に天が話していた事と関係があるんだろうとは思うが・・・それならどうしてあんな回りくどいやり方で?なんて、堂々巡りの考えが続いてしまう。
そして、それ以上にあの歌がもう歌えなくなった理由も知ってしまった事を、俺はこいつらになんて話すべきなのかも・・・いや、ちゃんと話さなきゃいけないよな。
幾ら日向が単独でやった事だとしても、そこまで日向を追い詰めていたのは間違いなく親父だ。
そのせいであいつらがデビュー曲として歌うべきだった曲が使えなくなり、既存の物を代用する事になったんだから。
アイドリッシュセブンのマネージャー、紡が天に聞かれて答えられなかったのも、その時既にそういう事が起きていたからだ。
だからあの時、あんな時間に小鳥遊社長が親父の所に来ていたと思えば、話は繋がる。
「なぁ・・・あの歌、また歌いたいと思うか?」
龍「あの歌って、社長が急に歌う事を禁止した例の曲のこと?」
何気なく言えば、それを聞いた龍が、歌ってもいいなら歌いたいよな?と同意を求めるような言葉を返す。
「もし・・・それが、本来アイドリッシュセブンが歌う曲だったって知ってもか?」
龍「オレたちの曲じゃなかったって・・・楽、それはどういう」
天「楽は気付いてしまったんだね、その曲の事」
龍の言葉を切るように、天が口を開く。
「天・・・お前は知ってたんだな?知ってたならなんで言わなかった!」
龍「やめろ楽!」
天ににじり寄りその胸元を掴めば、龍が間に割り込むようにして俺の手を天から引き剥がした。
「言えよ!なんで知ってたのに黙ってたんだ!」
龍「楽、落ち着けって。な?」
天「楽と龍が・・・あの歌が好きだって、そう・・・言ったから。だから、言わなかった・・・」