第4章 カケラの眩しさ
『2つともは申し訳ないので、ひとつは私が持ちますから』
そう言っても一織さんは顔色ひとつ変えずに袋を逆の手に持ち替えた。
陸「大丈夫だよ。一織だって男だし、これくらい全然平気だから」
一「そうですね。では、どうぞ七瀬さん」
陸「え?なんで全部オレに渡すの??」
一「荷物持ちでバランスの良いトレーニングを兼ねるのでしょう?片方だけでは、バランス取れませんよ?」
あ、そう言えばさっき一織さん達が来た時にそんなことを言ってたから?
陸「一織だってトレーニング兼ねられるだろ?」
一「私は普段からちゃんと鍛えてるのでご心配なく」
陸「環だって1個持ってったのに、一織だけ手ぶらとか」
一「それもそうですね。では」
だよな~!と叫ぶ七瀬さんを見て、一織さんが小さく笑った。
ここには3人いるんだし、ひとつずつ公平に持とうって私は手を伸ばした。
一「私は佐伯さんが迷子にならないように、この手を引くことにします」
陸「は?」
『えっ?!』
七瀬さんから袋を受け取ろうと出した手を、一織さんが何の躊躇いもなく繋ぐ。
一「行きますよ、佐伯さん。兄さん達が待っているのでしょう?」
クイッと手を引きながら一織さんがスタスタと歩き出す。
陸「一織ズルいぞ!···っていうか、オレを置き去りにすんなぁー!」
ガサガサと音を立てながら、七瀬さんが慌てて着いてくる。
『あ、あの一織さん?!手!手!』
歩き進む度に離れないように強く握られる手に目をやりながら、それでも置いてきぼりにされないように歩幅を合わせると一織さんが歩く速さを穏やかにした。
一「少し早すぎましたね。これでは無理やり連れて歩いてるようになってしまいます」
『そうじゃなくて!あの、手···繋がなくても迷子にはなりませんから離して下さ、』
一「離しませんよ?私が手ぶらになったら、七瀬さんがまた騒ぎますからね。だからこの手はこのままでいいんです」
ほんのり耳を赤くしながらもクスリと笑う一織さんを見て、これ以上なにを言ってもこの手は離しては貰えないだろうと私も笑いを零す。
だけど。
『一織さん?そういう理由なら、ほんのり耳を赤くするのやめて貰えますか?』
一「なっ?!···うるさい人ですね、行きますよ!」