第4章 カケラの眩しさ
「千だけじゃないよ。ちゃんと、愛聖も···大好きだから」
もう一人の、俺の小さなパートナー。
愛聖の何気ない言葉がヒントになって出来上がった曲だって、あるんだからさ。
いつか···話してあげるよ。
『またそんな適当なこと言って』
やれやれ···と言わんばかりに愛聖がまた、ため息を吐く。
「あれ?俺ってそんなに信用ない?」
ちょっとだけおどけながら笑って見せると、愛聖は黙って···また小さく息をついた。
言いたいことは、何となく分かるよ愛聖。
俺は何も言わずに、突然いなくなった。
その事をきっと、言いたいんだろう?
だけど今は···
「あのさ···無言の圧力、やめない?」
そう言って笑い飛ばすしか出来なかった。
『万理、言うの忘れてたけど···歌ってくれてありがとう』
「いいよ、別に。俺の歌で良ければ、この部屋でまた···歌うから」
明日から寮に入るのが分かってるけど。
機会があれば、また歌うことも出来るから。
···俺の歌で良ければ、だけど。
「さ、明日はいよいよお引越しだから最後の夜を過ごしますか」
『万理、なんかその言い方···やらしい···』
えぇっ?!
グイッと体を押し返され、予想もしてなかった反撃を食らう。
「そんな事、微塵も思ってないんだけど···だって愛聖だし」
『うわ···それはそれでなんか悲しい···色気ゼロ宣言されたみたいで』
そんな事は···ないんだけどね。
「じゃあ、俺に食べられたい?」
『お断りします』
「即答?!」
『だって、万理だし』
ベーッと下を見せて笑う愛聖に、それじゃお互い様じゃないかとオレも笑う。
二人でケラケラと笑う声を聞きながら、明日からはまた···この部屋でひとりの生活が始まる。
そう思うと寂しい気もするけど。
愛聖には、また輝いて欲しいから。
佐伯 愛聖 のファン第1号として、俺は背中を押すよ。
「叶うなら、少しでも早く輝きの元へ」
『ん?なに?』
「なんでもないよ···おやすみ」
『おやすみ、万理···』
愛聖の体温を感じながら、俺はベッドサイドの明かりを消した。