第15章 shine of the palm
❁❁❁ 天side ❁❁❁
スタッフが楽屋を出てからずっと、ボクたちは誰が何を言うこともなく・・・ただ、その時を待っていた。
どんな理由があろうと、こんな土壇場で出演をキャンセルだなんて有り得ない。
プロの・・・やるべき事じゃない。
人知れずグッと手を握り閉めて小さく息を吐けば、どこからともなく聞こえてくる声に楽が耳を傾けた。
楽「なんだ・・・この凄いブーイングは」
楽の言葉にボクも龍も耳を向ければ、聞こえて来るのはTRIGGERを出せ!と幾重にも重なり合うファンの声で。
「番組側が、TRIGGERは出ないって発表したんじゃない?」
それ以外の理由がないでしょ、と言って目を伏せた。
龍「でも、待って。イントロが聞こえないか?これって俺たちの・・・でも俺たちは・・・ここにいるのに」
イントロ・・・確かにこの曲は・・・それに、この声・・・まさか・・・?!
「龍!今すぐテレビ付けて!」
思わず叫んで龍にテレビをつけてもらえば、そこに映し出されるのはTRIGGERコールの嵐の中で歌い出す・・・アイドリッシュセブンだった。
「楽、龍・・・行こう」
楽「行こうって、どこにだよ」
「もちろん、このステージまでだよ」
テレビ画面から目を離すことなく言って、潰れそうな胸に思い切り酸素を取り込む。
龍「でも俺たちは・・・あの場所には上がれない・・・」
「それでも、行こう。出来るだけ近くで、ボクたちを待っていたファンのみんなの近くで・・・ファンの声を、心に刻んでおこう」
こんな事が何度もあってはいけない。
戒めの為にも、ちゃんと聞き届けなきゃ・・・
楽「あぁ・・・そうだな・・・行こう」
ボクと龍を見て呟く楽に頷いて、ドアを大きく開けて飛び出す。
姉「ちょっと!アンタたちどこ行くのよ!」
背後から聞こえる声にも構わず、ボクたちは・・・ボクたちを呼び続ける場所へと駆け出して行った。