第4章 カケラの眩しさ
歌い終わった万理が立ち上がる気配を感じて慌ててベッドに潜り込んだ。
だって私、寝てる事になってるし。
さっきまでドアの所にいたのは、迷子の猫さんで私じゃない。
息を潜めて寝たフリをしていると、ベッドサイドに人の気配がした。
まぁ···間違いなく、万理だけど。
気配を感じながら、ずっと息を潜める。
ベッドが少し軋みながら沈むのを背中で感じて、そこに万理が腰掛けたのがわかった。
万「もう、寝てる?」
『寝てるにゃん···あっ···』
狸寝入りを決め込もうとしてたのに、さっきまでの会話のクセで、つい···
万「わざわざ寝たフリとかしてくれちゃって、律儀だなぁ···愛聖は」
バレてるなら仕方ないと起き上がり、万理と向かい合う。
『だって···さっきのは猫さんで、私は寝てなきゃで。なのに万理が、』
言い訳のオンパレードをしようとして顔を上げ、言葉が止まる。
万理が···真剣な顔をしてるから。
万「さっきは、ゴメン。別に悪意があってあんな事を言ったんじゃないんだよ···ただ、ちょっと自分の中で消化出来てなかったモヤモヤした部分が、顔出しちゃって。でも今のでわかったんだ···俺はやっぱり、音楽もちゃんと好きなんだって事が」
『ずっと、歌う事をやめてたの?···あんなに、優しく歌えるのに』
万「まぁ、ね。でも、これからは···愛聖が聞きたいって時は歌う事にする。実は今、ちょっとだけ楽しかった···猫さんに聞いて貰うのが」
クスクスと笑い出した万理の胸をひとつ叩き、そのまま抱き着いた。
『2曲目、びっくりしたんだからね。どうしてあの曲を?』
万「千が···作った曲だから、かな。それに映画も見たし、Blu-rayだって実は持ってる。何度か見たけど、見る度に泣けるから封印中」
映画も見てくれて、購入まで?
『万理はホントに、千が大好きなんだね···』
からかうように息を吐いて言えば、万理は笑った。
万「千だけじゃないよ。ちゃんと、愛聖も···大好きだから」
『またそんな適当なこと言って』
万「あれ?俺ってそんなに信用ない?」
···突然いなくなったクセに。
万「あのさ···無言の圧力、やめない?」
万理の苦笑で、その場の空気が更に和んだ。