第4章 カケラの眩しさ
「僕もさっき、同じ事を考えてたよ。撮影期間、ここから通う方が近かったし。何より愛聖は、ここでしか弱音が吐けなかった環境にあったからね」
百「だ~よね~···八乙女パパ、怒るとすぐ怒鳴るし。やる気のない人間は必要ない!!とっとと去れ!!とか」
「モモ、そのモノマネやめて···プッ···クククッ···ツボる···」
不意打ちのモモのモノマネにプルプルと震えながら笑いを堪える。
あ、なんか···今ので息抜き出来た。
「モモ、ありがとう」
百「え?なんのこと?···あ、八乙女パパのモノマネ?もっかいやろうか??」
モノマネ···
「プッ···そ、それは···もう···いいから」
つい今しがたのモモを思い出して、また笑う。
百「よく分かんないけど、ユキに役立ったなら···いっか!」
満面な笑みを浮かべてはしゃぐモモからは、さっきまでグスグス泣いていた事が嘘のようだ。
「いいリラックスには、なったよ?さぁ、僕はもうひと頑張りしてくるかな?モモは自由に過ごしてていいから。今なら軽く摘めるものでよければ作るけど?」
百「ユキが作ってくれるの?!食べる食べる!!」
「いいよ、じゃあ···待ってて?」
簡単に支度をしてキッチンへ入り、モモの為に軽く食べられるものを作る。
今でこそ、誰かの為に何かを作る···なんて、楽しくしているけど。
昔の僕がたまご焼きひとつさえ、まともに焼けなかったなんて話したら、モモは驚くだろうか。
···たまご焼き、か。
何気なく冷蔵庫を確認して、必要な数を取り出した。
愛聖は、甘いのが好きだったよね。
たまごをかき混ぜながら、気が付けば脳裏に浮かぶ曲を口ずさんでいた。
百「ユキ···なんかご機嫌?鼻歌とか歌って珍しくない?···それ、さっきの映画の曲だよね?」
「そうね。なぜかメロディに乗ってみたくなったんだよ···誰かが、歌ってる気がして」
カウンターから顔を覗かせるモモに笑いかけながら、その誰かって言うのは、誰なんだろうと自分に苦笑する。
百「マリー···だったりして?」
「どうだろう···もっと意外なヤツかも知れないね?」
それが誰なのかは、僕も分からない。
だけど今、この広い空のどこかで···同じ曲を歌ってる人がいる。
···そんな、気がした。