第1章 兵長の身長がめっちゃ伸びた話
日中の仕事もあらかた片付いた頃、リヴァイはの執務室を訪れた。
コンコン、と扉をノックすると中からの声が聞こえる。
ゆっくりと扉を開けて中に入れば、机に向かって事務仕事をしていたと目が合った。
「あ…リヴァイ先輩」
今朝と同じように、リヴァイの姿を見るとはすっと目をそらした。
リヴァイの胸に、チクリと痛みが指す。とはもう本当に長い付き合いだ。だが、その長い付き合いの中で、今のように目をそらされたりそっけない態度を取られたのはこれが初めてである。
リヴァイの眉間にうっすらとシワが寄る。
「…おい、朝から態度がおかしいぞ。俺が何か気に障る事でもしたか?」
ツカツカと、に近づいていく。
「そ、そんな事ありません」
だが、その言葉とは裏腹に、は視線を合わせないどころか、俯いてしまっている。
「立て」
椅子に座るの目の前に立ち、命令口調で言う。
言われた通りに立ちあがっただが、顔は下を向いたままだ。
何がそんなにの機嫌を損ねてしまったのか。
リヴァイは苛立ちながらも、至極優しい手つきでの細い顎を持つと、くい、と上を向かせた。
「……!?」
表れたの顔は、まるでリンゴのように真っ赤になっていた。突然の事に、リヴァイは狼狽する。
「…ど、どうした」
あまりにも赤いので、リヴァイはだんだんと心配になってきた。
「どこか具合でも悪いのか?!」
先ほどまでの不機嫌さはどこへやら、急にあたふたし始めたリヴァイに、もわたわたと意味のない動きを繰り返している。
「せっ…せ、せんぱ…、とりあえず…離して…」
「いや、熱でもあるんじゃ…」
リヴァイの手がの額にぺた、と当てられた瞬間、ふうっ、との身体が床に崩れ落ちた。
「おいっ!!」
慌ててリヴァイがの身体を抱き起こしてやると、腕の中のは赤い顔をますます赤くして、
「せ、先輩、格好良すぎです…」
とつぶやいた。