第1章 兵長の身長がめっちゃ伸びた話
「へ、兵長っ?お、おはようございます。お食事をお持ちしましたっ」
食事のトレーを持ったオルオが、やや頬を染めながら挨拶をしてくる。
「あぁ、すまない」
リヴァイがそれを受け取ると、オルオはきゃあきゃあ言いながら、ペトラ達の座るテーブルに戻っていった。
リヴァイはの方へ向き直るが、は何故だかこちらを見ようとしない。掻き込むようにして食事を食べている。
「おい…」
リヴァイが話しかけようとすると、
「ごっ、ごちそうさまでしたっ」
は唇の端にパンくずをつけたまま、慌ててテーブルから離れて行ってしまった。
「……?」
遠ざかっていく小さな背中を見て、リヴァイはなんだか悲しい気持ちになった。
時には小さな巨人などと言われる自分は、何よりもこの低い身長がコンプレックスであった。
今まで一体何度、身長が伸びたいと願ったことか。身長が伸びると言われている食材は積極的に摂ったし、良いと言われているトレーニングも試してきた。
身長が伸びることは、リヴァイにとっての悲願であった。
今回、ハンジの意味不明の薬によってではあるが、自分が理想としていた高さにまで身長が伸びた。
手前味噌ではあるが、高い身長も手に入れた今、ルックス的にはそれほど悪くないと思う。
それを一番見て欲しかったのが、であったのに。
が席を立ってしまったことで、それまで上機嫌であったリヴァイの機嫌は一気に急降下した。
むっつりとして食事を始めるリヴァイに、一部始終を横で見ていたハンジが必死に笑いをこらえながら言った。
「…っくくく、リヴァイ、後での部屋に行ってやりなよ」
「…?何でだ?」
「行けば分かるから」
しまいには腹を抱えてテーブルにつっぷしてしまったハンジを、もはや側近と言ってよいモブリットが、あきれながらも介抱しはじめた。
「……?」
ハンジの言った事の意味が今一つ分からない。それに、の態度も分からない。なぜあんなにそっけないのか。…もっと、花の咲くような笑顔を見せて喜んでくれると思ったのに。
先ほどまでの高揚感がすっかりなくなってしまったリヴァイは、ボソボソと、食事を進めた。