第4章 バレンタイン
自室に戻ったリヴァイが、先程の打ち合わせの中で新たに指示された書類にさっそく取り掛かっていると、コンコンと控えめに扉をノックする音が聞こえた。
おそらくだろう。今、彼女の両手はふさがっているだろうと思い、リヴァイは席を立つと扉を開けてやった。
「ありがとうございます、先輩」
思った通り、そこにはティーセットの乗ったトレイを持ったが立っていた。二人の時しか呼ばないその懐かしい呼び方をして、ドアを開けたリヴァイに礼を言った。
はいつもこうやって紅茶を淹れてくれる。そのタイミングは毎回絶妙で、先ほどのように丁度リヴァイが飲みたいと思った時に、ちょうど良い熱さの紅茶をすっと出してくれるのだ。リヴァイはいつもそのありがたみを感じながら、の淹れてくれた美味しい紅茶を飲んでいる。
カチャカチャと、小さく陶器の音を鳴らしながら、が紅茶を応接セットのテーブルの方に用意してくれる。
ふわりと紅茶の良い香りが鼻をくすぐる中、リヴァイは応接セットのソファに腰を下ろした。その正面のソファにはが腰掛ける。これが、二人の定位置だった。
ふとリヴァイは、紅茶カップの横に小さな皿が置かれていることに気が付いた。そこには、可愛らしい造形の茶色いものが何個か乗っていた。