第4章 バレンタイン
兵士達から向けられている、自身に対する気持ちなどには全く気づいていないリヴァイは、少しだけ肩を落として調理場に入っていった。するとそこには、の姿があった。
「あ、兵長お疲れ様です。どうされました?」
リヴァイが入ってきたことに気づいたは、振り返って言った。
湯を沸かしていたようで、窯の上に乗った小さなヤカンからは湯気が立ち上っているのが見える。
「あぁ、少し喉が渇いてな。茶でも入れようかと思ったんだが」
「それならちょうど良かったです。今、紅茶をお持ちしようかと思っていたところだったんですよ」
そう言って笑ったに、リヴァイは表情を少し緩める。
との付き合いはもう何年にもなり、この顔は毎日見ている。だが、見慣れてはいるが見飽きることは決してないだろうと、リヴァイはいつも思っていた。この笑顔が、どれほど自身の心を安らがせているのかを、きっとは知らないだろう。言ったことも無いし、気恥ずかしくて到底言えたものではないが、が隣にいてくれて、こうして笑いかけてくれるだけで、リヴァイは十分満ち足りた気持ちになるのだ。
「そうか、いつもすまない」
「お部屋にお持ちしますから、もう少しだけお待ちくださいね」
「あぁ」
先程食堂を出た時に感じた寂しさなどすでにどこかへ吹き飛んでしまった。リヴァイは足取りも軽く、自身の執務室へと向かった。