第4章 バレンタイン
「エルヴィン、俺だ。入るぞ」
目的の部屋に到着し、小さくノックしてからリヴァイは扉を開けた。
しかし、扉を開くと同時に、まるで星でも降ってきたかのように視界いっぱいにキラキラとした光景が広がった。
「・・・てめぇ、そりゃどういう状況だ」
リヴァイが眉を寄せて見つめた先には、自身の机に座って書類作業を進めるエルヴィンの姿があった。だがその机の上には、先程リヴァイに星を思わせた原因とおぼしき色とりどりのパステルカラーの箱が、今にも崩れてしまいそうにうず高く積み上げられている。
エルヴィンは、その箱の山の間で肩を縮こまらせながら書類にペンを走らせていたのだ。
「やぁ、リヴァイ。・・・今日はなぜか皆が贈り物をしてくれてね。一体何故だろう、誕生日でもないのに」
小首を傾げたエルヴィンは、持っていた羽ペンをインクボトルに差し込むと、書き終えた書類の束をトントンと整えた。その顔は、普段見せる険しい表情ではなく、少し眉根を下げて困ったような色をたたえていた。
調査兵団第13代団長であるエルヴィンは、兵団の士気に関わるという理由もあって兵士達の前では意図的に厳しい表情を作っているが、リヴァイやその他の一部の幹部たちの前でだけはその鉄の仮面を少し外す。本来のエルヴィンは、春の陽だまりのように穏やかに笑うことのできる男なのだ。