第4章 バレンタイン
「何だ・・・?今日はやけに騒がしいな」
兵団本部の廊下を歩いていたリヴァイは、形の整った眉を寄せて辺りをジロリと見回した。
というのも、先程からすれ違う兵士達が皆一様にソワソワとした仕草をしては小さな笑い声を立てているからだ。
「・・・チッ、ガキどもが」
ソワソワとしている兵士達とはまた違った意味で早足になったリヴァイは、目的地を目指して歩を進めた。今日はこれから、エルヴィンの執務室で打ち合わせをすることになっているのだ。それに、頼まれていた様々な資料の提出もしなければならない。
リヴァイは、小脇に抱えた書類の束を持ち直した。ずっしりと重いそれは、幹部達の書類業務の多さを表している。
兵士というものは基本的には肉体労働であるので、一般兵士であればデスクワークなどはほとんどない。だが班長や分隊長などの上位の役職に就くと、必然的に兵団の管理者側の役割に回るため、日々細々とした書類を作成しなければならないのだ。
そしてそれは兵士長という任に就いているリヴァイも例外ではなく、地下街で文字の書き方も分からずに生活していた頃に比べると、想像もつかないほど毎日ペンを握っている。