第3章 君の匂い
「ねぇねぇ、リヴァイ」
「何だ、くそメガネ」
「君って、結構のんびり屋さんだよね」
「…あぁ?」
「いつまでも隣にあると思っていると、ある日いきなり無くなっちゃうこともあるんだよ」
「…何言って…」
ハンジの指さす先を見た瞬間、リヴァイの身体がまさしく矢のように飛んだ。
「あの機敏さがあるのにねぇ…」
慌てて飛んでいったリヴァイの背中を見ながら、ハンジはため息をついた。
「でもまぁ…あまりスムーズにいかれても私の楽しみがなくなっちゃうからね」
ニヤニヤと笑って、ハンジは自身の研究室へと歩いて行った。
飽きずにの頭を撫ぜていたミケの鼻がスン、と動いた。
(やれやれ…もう気付かれたか)
名残惜しいものの、の頭から手を放す。
「…ミケ」
じっ、と背後から刺すような視線を感じた。
「リヴァイ、どうした。会議は終わったのか」
「あぁ、今終わった」
振り向かなくても、リヴァイが今どんな顔をしているかは分かる。おそらく般若みたいな顔だ。
「あ、兵長」
ミケの影からヒョコ、とが顔を出す。その瞬間、あっという間にリヴァイは普段の表情に戻った。人類最強の反射神経である。
「よ、茶を入れてくれないか」
「はい」
リヴァイの唐突な要求にも、はニコニコと笑ってうなずく。
「ミケさんも一緒にどうですか?」
コバルトブルーの大きな瞳で見上げられ、ミケは思わず頷きそうになってしまうが、そこはぐっとこらえた。
「…いや、今日は遠慮しておく。ありがとう」
「そうですか?じゃ、今度はぜひ」
「あぁ、楽しみにしている」