第3章 君の匂い
「」
「わっ」
ぬっ、といきなり姿を現したミケに、は驚いた。
ミケは兵団内でも一、二位を争うほどに背が高く、196cmもある。対してはリヴァイよりも小柄であるため、まさに見上げるような身長差である。
「これ、食べるか」
ミケは、先日内地に出張した時に買ってきたチョコレート菓子をの小さな手にちょこんと乗せた。
「え…」
「食べてみろ、うまいぞ」
「あ…、は、はい」
チョコレートを口に頬張りもぐもぐとするは、実際の年齢よりもずっと幼く見える。だから余計に、過酷な状況に立たされているのを見ると可哀想になってしまうのだ。
「美味しいです」
上を向いて、ニコッと笑ったを見て、ミケは満足そうにわしゃわしゃとの頭を撫ぜた。
「ミケさん…、本当にいつも、ありがとうございます」
頭を撫ぜられうつむいているの表情は、ミケからは見ることはできない。
だが、微かに香ってくるチョコレートの匂いで、彼女が笑っているのがミケには分かった。
いつもこうだ。ミケは、が落ち込んでいるのを見ると放っておけない。だが、寡黙な彼にとって言葉で慰めることは至難の業であった。
なので、ありきたりながら、菓子を食べさせることで慰めようとした。子どもではないのだから、菓子を食べたくらいで重い責務の重圧を忘れることなどできはしない。
だが、にはミケの思いやりがよく分かっていた。何よりも、気遣ってくれるミケの気持ちが嬉しかったのだ。
大人しく頭を撫ぜられているを見下ろしていると、ミケの心にはムラムラとある感情が湧いてくる。
(可愛いなぁ…リヴァイの奴、いつまでモタモタしている。早くしないと、俺がさらっていっちまうぞ)
サラサラと、指通りの良い髪の毛が心地よい。ミケはもうちょっとこの時間が続けばいいのに、と思って目を閉じた。