第6章 Everything about me is yours
調査兵団の兵士は、役職付きの者であれば自宅を持つことが許可されているが、基本的には兵団宿舎での共同生活が義務付けられている。
ゆえに、掃除、洗濯、炊事は、兵士達自身が当番制で行わなければならず、必然的にその当番は新人兵士達へと押し付け…もとい任せられていた。
「すっかり夏だね~、洗濯物がよく乾いて助かるよ」
「あぁ、そうだな。しっかし、毎回すげぇ量だよな」
額に浮かんだ汗を拭いながら言ったアルミンに、井戸の横に置かれた大判のタライの中に両腕を突っ込んで、バシャバシャと布を擦り合わせながら答えたのはエレンだ。
2人は今日が洗濯物の当番であり、朝食を食べ終えてからずっとここで洗濯をしている。
兵士達が洗濯に出して良い衣類には、ルールがある。
まず下着は出してはいけない。
単純に恥ずかしいからという事もあるが、洗濯当番には当然男女関係なくあたるため、年若い新兵達に異性の下着を洗わせるのは、風紀的にいかがなものかという理由である。
そして、ひどい汚れがついた場合には、予洗いしてから出すか、そのまま自分で洗濯しなければならない。
大勢の兵士達がいっぺんに洗濯物を出してくるので、当然衣類には自分の名前を書いておく。そうしなければ、永遠にその洗濯物は自分の元へと帰ってこないからだ。
だがここまでは、個人の洗濯物についてである。
洗わなければならないものはそれだけではない。兵団皆で共有している物の洗濯が、当然のごとくある。
最も頻度が高く、この作業の大部分を占めているものが、ベッドシーツの洗濯であった。