第11章 酔っ払いとの戯れ
「なぁ…今日は俺んち寄ってけよ」
「っ…」
終電を待つ駅のホームでぽつりと呟かれた言葉…
今日は金曜日。
久しぶりに部署のメンバーで飲みに行く事になり、二次会にまで参加してしまった私と野宮先輩は終電が来るのを待っていた。
突然の誘いにドキリと心臓が跳ねる。
週末、先輩が私の家を訪れてそのまま泊まるという事は何度かあったが、私が彼の家に行くのはこれが初めてだった。
勿論断る理由など無い。
お酒のせいで少し潤んでいる彼の瞳にドキドキしながらこくりと頷く。
「じゃ…決まりな」
「……、」
そう言って嬉しそうに笑いながら、彼は私の手をぎゅっと握った…
(ここが先輩のマンション…)
10階建てマンションの最上階に彼の部屋はあった。
まだ割と新しいのか綺麗な建物だ。
「…入れよ」
「……、」
少し緊張しながら、促されるまま中へ足を踏み入れる。
歩を進めた先にあった10畳程のリビングは、想像していた通り物が少なくスッキリと片付いていた。
クールでスマートな先輩に似合いの部屋だ。
「…葵」
「っ…」
ふと名前を呼ばれたかと思えば、ぎゅうっと背後から抱き締められる。
その体がいつもより熱くて思わずドキリとしてしまった。
「なぁ…こっち向いて?」
「……、ん…っ」
顔を上げて先輩の方を向くとすぐに唇を奪われる。
少しアルコールの味がする彼の唇…
けれどそれが却って私の体を熱くさせた。
「ぁっ…」
急に抱き上げられたかと思えば、そのままソファーの方へ運ばれる。
そして私をその上へ寝かせると、彼が上から覆い被さってきた。
「せ、先輩…っ…」
「ん…?」
「いや、あの…」
いつもよりとろんとした顔をしている彼。
結構飲んでいたみたいだし、ひょっとして酔っ払っているのたろうか?
「先輩…酔ってます?」
「…酔ってねーよ」
そう答えながら私の首筋に顔を埋めてくる。
「ちょ、ちょっと…」
「お前の匂い…すげー好き」
「っ…」
今日は沢山汗もかいているはずだし、当然シャワーだって浴びてない。
それなのにそんな所に顔を埋められ恥ずかしくなる。
「せ、先輩…やっぱり酔ってるでしょう?」
「ああ…お前になら酔ってる」
「……、」
.