第2章 プロローグ
「え……部長…、今なんと…?」
「だからね、次の企画は君と野宮くんに任せたいんだ」
退社時間直前…
部長のデスクに呼び出されたかと思えば、さらっとそんな事を言われた。
入社3年目。
うちはそこまで大きな食品メーカーではないが、最近は会社も軌道に乗ってきており社員全員忙しい日々を送っている。
そんな私は去年企画部へ配属され、企画にも何度か参加させてもらえた。
そして今回はいよいよ、新しい企画を任せてもらえるというのだが…
(なんでよりによって野宮先輩…?)
私と一緒に呼び出され、今も隣に立っている先輩を一瞥する。
彼はいつもと変わらず涼しい顔で部長の話を聞いていた。
…正直、私は彼が苦手だ。
いつも無表情で何を考えているか分からない。
顔は誰がどう見てもカッコイイし、背だって180センチは軽く超えていてガッチリしている(私としてはそこも恐い要因になるのだけれど)。
社内にはファンクラブもあるとか無いとか…
「…失礼します」
部長の話をひと通り聞き終えた先輩は軽く一礼してその場を立ち去る。
私も慌ててその後を追った。
「あ、あの……野宮先輩」
苦手とはいえ、ここは一応挨拶くらいしておくべきだろう。
立ち止まって振り返った彼に、「明日からよろしくお願いします」と告げる。
すると彼はじっとこちらを見下ろし…
「………」
「……、」
「……ああ」
少しの間があった後、ひと言だけそう返してきた。
そして自分のデスクへと戻っていく。
(やっぱり苦手…!)
これから一緒に仕事するんだし、もう少し愛想良くしてくれても…
「ハァ…」
明日からの仕事に、私は一抹の不安を覚えるのだった…
*