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*スーツを着た狼*【R18】

第4章 近づく距離





「ご馳走さまでした、すごく美味しかったです」

今日は量もちょうど良く、私はあっという間にお弁当を完食してしまった。
男の人なのに、こんなに料理が上手だなんて本当に羨ましい。


「先輩の分のお弁当箱も貸して下さい。後で洗っておきますから」

「いいよ別に」

「だめです!そのくらいは私にさせて下さい」

少し強めにそう言うと、一瞬驚いたような顔をした先輩はその口元に柔らかい笑みを浮かべた。

(うそ…先輩が笑った……)

初めて見る彼の微笑み。
けれどそれはほんの一瞬で、すぐにいつもの無表情に戻ってしまう。


「お前って律儀っていうか…変なところ強情だな」

「そ、そうですか…?」

「でもまぁ…俺は嫌いじゃないけど」

「……、」

その言葉にドキリと心臓が跳ねる。
彼にとっては特別な意味があった訳じゃないかもしれないが…


(今なら……聞けるかな…?)

昨日どうしてあんな事をしたのか…
膝の上の拳をぎゅっと握る。
先輩の顔を見ながら話す事は出来そうになかったが、私は勇気を振り絞って昨日の事を問い詰めようとした…

けれど。


「きゃっ…!」

突然引っ張られた腕。
バランスを崩した私は、そのまま彼の体に倒れ込んで…


「…時間まで寝てろ」

「へ…?」

気付けば私の頭は彼の膝の上。
所謂"膝枕"というものをされているのだとようやく理解する。


「ちょっ…、先輩!?」

「暴れんな…大人しくしてろって」

「……、」

「お前…昨日寝てないだろ?」

「…え……?」

「ここ…クマ出来てる」

「っ…」

そう言って私の瞼の下に触れる彼。
いや…これもあなたのせいなんですけど…
と言ってやりたかったが、そんな事を言える状況ではない。


「寒くないか?」

ジャケットを脱いだ先輩がそれを私の体に掛けてくれる。
先輩こそ寒くないのかと遠慮してみたが、「平気だ」と返されてしまった。


「時間になったら起こしてやるから」

「……、」

男の人に膝枕などされたのは初めてだ。
こんな状態で眠れる訳がない…と思っていたが、流石に2日間寝不足だったのが祟ったのか、だんだんと瞼が重くなってくる。
それに加え優しく髪を撫でられ、私はいつの間にか意識を手放してしまった…



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