第4章 たとえば、君を知る倖せ【黒子のバスケ/黄瀬涼太】②
「詞織っちはカワイイって言って喜んでたっス!」
「バカね。そんなの気を遣ったに決まってるでしょ」
「……何してるんスか?」
紗良はあからさまに背を向けて、携帯に何か打ち込み始めた。
「詞織に確認」
しばらくして、流行りのJ—POPの着メロが鳴る。
知っている曲だ。
確か、大ヒット上映されている恋愛映画の主題歌。
そんなことを考えていると。
「ガーンッ!」
何故か携帯を見た紗良が打ち震えた。
取り落とした携帯を覗き見ると。
――黄瀬さんにつけてもらったあだ名は、可愛くて気に入っています。
「やったっス!」
初めて紗良に勝った!
勝利のガッツポーズをしていると、彼女は携帯画面を見ながら泣いていた。
「何で? どうして? 詞織が分からない……っ! 今までこんなことなかったのに!」
ブツブツと何かを呟く紗良は、屋上の隅でコケを生やしそうな勢いだ。
「そういえば、詞織っちっていつもそんな感じっスか? 絵文字も顔文字もスタンプも使わないし、文章も普段以上に固めっスね?」
昨日から何度か連絡したが、どれもガッチガチな文章だった。
「まぁね……いつもこんな感じ? 相手に不快感を与えない無難な文体だからって……絵文字とかも、自分の気持ちを表すのにしっくりこないとか? まぁ、親友の気持ちも分からないあたしに言えたことじゃないけどね……」
かなり落ち込みようだ。
紙袋も相まって、不気味さMAXである。