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たとえば、キミを愛する倖せ【短・中編集】

第1章 たとえば、君に名を呼ばれる倖せ【名探偵コナン/安室 透】


 風見たちから届いた彼女の書類には、住所や家族構成の情報に加え、隠し撮りした写真もついていた。
 黒く長い髪と琥珀色の大きな瞳が特徴の、綺麗な顔立ちをした美少女だ。


 ネット歌手――DIVA。


 それが彼女のもう一つの名前ということは、ベルモットはそこで彼女を見つけたのだろうか。

「……安室さん?」

 唐突に名前を呼ばれ、安室はハッと顔を上げる。

「あぁ、梓さん。すみません、少し考えごとを。すぐに洗ってしまいますね」

 バイト中だったことを思い出し、安室は慌てて洗い物を再開した。
 洗い物を終えたところへ、ポアロのドアベルが鳴る。

「いらっしゃいませ」

 手をタオルで拭ってカウンターへ出れば、そこには、つい数時間前に写真で見た少女が入店してきた。
 黒く長い髪、琥珀色の瞳、同年代の少女よりもやや低い身長と、細い手足。


 ――神結 詞織だ。


 まさか、こんなに早く会うことになろうとは。
 安室が深海色の瞳を丸くしていると、彼女の琥珀色の瞳と視線がぶつかった。

「こんにちは」

「あ、あぁ……いらっしゃいませ。初めてのお客様ですよね?」

 トレイに水を入れたコップを持って「ご注文は?」と聞けば、彼女はメニュー表に視線を走らせた。

「うーん……迷っちゃいますね。何かオススメはありますか?」

 そこへ、さらに来客が訪れる。


「「「――こんにちは」」」


 入口へ目を向ければ、ドアに嵌められたガラスの向こうに、橙色に染まった街並みが見えた。

「あ、コナン君に蘭ちゃん、園子ちゃんも。いらっしゃい」

「「こんにちは、梓さん」」

「こんにちはー」

 やって来たのは、ポアロの上に住居と職場を設けている毛利探偵の一人娘である毛利 蘭と、その友人で鈴木財閥の令嬢である鈴木 園子、毛利宅に居候をしている江戸川 コナンだ。
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