第7章 たとえば、君を語る倖せ【クロスオーバー】
「お前の好きなモンでいい」
「なら、ここに行きましょう! 乱菊さんが『すごく美味しい』って言ってました!」
どこから取り出したのか。
詞織は雑誌のページをめくって示してくる。
十番隊副隊長のオススメらしく、付箋には『乱菊さんオススメ!』と記載してあった。
外見年齢相応の少女のようにはしゃぐ詞織に、日番谷はこっそり口角を上げた。
「ほら、とっとと行くぞ」
手を差し出すと、途端に詞織は逡巡する。
「どうした?」
「え……と……い、いいんですか?」
何をもって「いいんですか?」と聞いているのか。
日番谷はパシッと少女の手を取って歩き始めた。
「付き合ってんだから、これくらいフツーだろ」
はぐれないように手を繋いでいるだけだ。
「はい、日番谷隊長」
一瞬目を丸くした詞織だったが、次に気恥ずかしそうに笑顔で頷いた。
やはり、自分の部下が一番可愛い。
人形のように澄ました表情も悪くないが、外見年齢相応にはしゃぐ少女の姿が、日番谷は特に好きだった。
……なんて、本人には絶対に言わないが。
軽く後ろを振り返ると、愛しい少女と視線が交わる。
日番谷は繋いだ手に力を込め、少し歩くペースを落とした。