第2章 春、入学、早々に大問題。
「一緒になんて行かないからね‼︎」
入学式の次の日。
早めに登校するため玄関を出ようとすると後ろから、トーストを口に咥えたリエーフが追いかけ、ローファーを履く。
そして玄関に立つ私の隣に並んでにこり、笑った。
「だって俺、電車通学初めてだから。教えてよ、アンナ?」
隣に並んだリエーフ。
くいと腰を折り私の顔を覗きながら、ね?と駄目押しをする。
宝石のようなきらきらとした瞳で覗き込まれてしまえば、NOとは言えなくて…
「…電車降りるまでなら…」
ついぶっきらぼうに答えれば、リエーフの顔がぱああと笑顔になる。
「やったっ!ありがとアンナ‼︎大好き‼︎」
あ、と思う間に、抱きしめられる体。
制服越しの硬い胸板に、どきん、心臓が跳ねる。
「っ!やめてよ!小さい子供じゃないんだし!」
ぐいと体を押せば、離れていく腕。
よかった、と思う反面、ちょっと名残惜しく思う心。
「いいじゃんハグくらい。きょうだいなんだからさ。」
…前言撤回。
ハグなんてさせなきゃよかった。
嬉しいという気持ちが風船みたいにしぼんでく。
「じゃあいくよ。」
出していた手をブレザーのポケットにしまう。
冷えた気持ちを少しでも温めるために。
リエーフの声を聞きたくなくて、
私はわざと早足であるいた。