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言えない”スキ”の伝え方【HQ】

第1章 春、好きだけど嫌い。


「ねえ、アンナ?まだ春休みでしょう?
明日一緒にお買い物行きましょうよ。」

ある3月の昼下がり、リビングで撮りためたドラマを消費中のわたしに、姉のアリサは問いかける。
お買い物、かぁ。
まあ、ここ数ヶ月アリサは大学受験で忙しかったからなぁ。
久々だし付き合おうか。
明日はバイトも入ってないし。

「いいよ?どこ行くの?」
「うーん…じゃあ今セールしてるみたいだから、あのショッピングモールはどう?あと、一人暮らしに必要なものも見ておきたいし。」

そう言いながらアリサは、ソファに座るわたしの隣にぽふんと腰掛けた。
アリサは私の姉。
一つ上の彼女は、姉というより親友のようだ。
つい最近高校を卒業し、4月から大学生の彼女は行きたい大学と家が離れているため、もうすぐ一人暮らしをすることが決まっている。

いいね。そう声をかけようとした時、不服そうな声とともにぱたぱたとスリッパを鳴らしながら近づいて来る大きな体…弟のリエーフが私たちに近づいてきた。

「えー…アリサ、アンナ、俺は?俺も一緒に行きたい!」
「レーヴォチカ…高校の課題には手つけたの?絶対手伝わないからね?」

そうため息まじりに言い捨てれば、リエーフはしまった…とでもいうような苦い顔をした。
あ、レーヴォチカはリエーフの愛称ね?

行きたい…でも課題が…

そんな声が聞こえそうな顔をして悩むリエーフ。
まあ、しょうがないか…
はあ、とわざとため息を吐くと私はアリサに向かって声をあげた。

「まあ、レーヴォチカも受験頑張ったしご褒美も必要だよね、アリサ?」
「そうよね?」
「でも課題終わらない子、連れていけないよね?」
「うーん…やっぱり学校の課題は大事よね。」

2人で小芝居をしていれば、うあー!とリエーフが叫んだ。

「じゃあ今から頑張る!だから明日一緒に行かせて!」

まあ、こうなることはわかっていたので、はあ、と息を吐くと私の遥か上にある瞳を見つめ言葉を放った。

「だったら今から夕飯まで頑張る。その進み具合で明日どうするかきめてあげる。」

苦い顔をしていたリエーフ。
私の話を聞いた途端ぱああっと顔が晴れ、座っている私の背中にのしかかってきた。

「やった!アンナ大好き‼︎」

近づく距離
すりり、と擦り寄る頬
触れる吐息

ぐるりと回る骨ばった腕に私の心はとくんと跳ねた

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