【ツキプロ】 ALIVE SOARA中心夢小説まとめ
第14章 あいあいがさ(大原空)
...。
近い。とても、近い!
折り畳み傘よりは大きいけれど、2人が入るように設計されていない傘はきつくならばないと肩がびしょ濡れになってしまう。俺はそれでもいいのだけど、彼女は傘に入れてくれているわけで、それで風邪を引くようなことにはなっちゃいけないし。
彼女も彼女で俺が濡れないようにばかり気を向けるから、結果肩が触れ合う距離で歩き続けている。
「あ!あの、このまえの数学の宿題やった?」
『え...うん。明日提出のやつ、だね。』
「あれ明日提出か...!忘れてた、やばい」
『問題量はあるけど、教科書に似たような問題がたくさんあった』
「そ、そっか。ありがとう」
取り留めのない会話を続けるけど、どうしよう。共通点がないから話題がさがせない。話すことがなくなると、彼女はぼんやりしたを眺めてしまった。
少ししめった髪が彼女の横顔を、頬を隠してしまう。
どんな顔、してるんだろう。なんて考えて、ペースを落として歩いた。
言葉をかわさない時間が増えて。
だけど、そこまで居心地が悪くないことに気がつく。
だんまり歩いて、少し。
雨が小ぶりになったところで、ここまででいいよ、ありがと!と声をかけた。
「ほんとに助かった!ありがとうね」
『いえいえ...』
「今度はちゃんと傘持ち歩くようにしなきゃ」
『...いいんじゃない?』
「え?」
『また、一緒に入れば』
雨の中咲き誇る紫陽花みたいに、彼女は微笑んだ。
こんな笑顔みたことなくて動揺する。
『なんてね...まぁ、風邪ひかないよう気をつけて』
「う、うん」
すぐまた大人な顔に戻ってしまって、でも心臓のドキドキは止まらない。
「っ、また明日!」
『またね、大原くん』
優雅に元来た道を歩き出す彼女。そっか、遠回りしてもらったのか、申し訳ないな。なんて思って気持ちを誤魔化す。
いつか、またあの笑顔が見られる時が来るのかな。
その時は、また雨の日な気がする。
近い未来に期待して、水たまりを大きく飛び越えた。