【ツキプロ】 ALIVE SOARA中心夢小説まとめ
第9章 俺じゃ (七瀬望)
『───っ』
また、だ。
先輩が、泣いてる。
多分、あの人絡みのことなんだろう。
初めて泣いてるところを見かけたのは、夏の日の放課後だった。バンド練習に向かう途中で、見覚えのある影を見かけて。うっすら開けた扉の先でいつも笑顔のたえない先輩が、泣いている。俺はとんでもなく戸惑ってしまって、慌てて飛び込んだ挙句、持ってたまだあけてないジュースを差し入れることしか出来なかった。
でも、先輩は涙の筋が消えないまま笑って、ありがと望くん、と言ってくれた。
それから何度か先輩が窓の外を見つめて泣いているのを見かけた。
少しずつ、少しずつ先輩がなんで泣くのかわかり始めた。
大抵、あの人が呼び出された日の放課後なんだ。
先輩があの人を好きなんだってわかってくるのに比例して、俺は先輩がどんどん好きになってしまって。
叶わないって分かってるのに、好きの大きさだけが膨らんで、あの人のために泣いている先輩を見て嫉妬しながらも、この瞬間だけは2人だけの時間なんだってユーエツカンにも浸ってた。
暑かった夏は遠く。
もう季節は冬を超え、春を迎えようとしている。
先輩は卒業してもきっとあの人に想いを伝えることはないんだろう。
マネージャーのような役割をして、SOARAが活躍するために頑張ってくれた人だ。
それを無下にするようなこと、絶対に言うわけない。
俺がいくら慰めても、ギャグで笑わせても、それはイチバンにはならないって、気づいたのはいつだっけ?
とっくの昔の気もするし、最近な気もする。
けど、そんなのどーでもよくて。
先輩は、いなくなってしまう。
ツキプロに正式所属が決まった以上、先輩と俺たちは芸能人と一般人という明確な線がひかれる。
きっと、簡単には会えなくなるし、高校の中で守られてきたような他愛ない触れ合いだって、できなくなる。