第11章 破滅の鐘
「それは今から見つけ出せばいい」
「そうですよ。
世界は広いです・・旅をしながら見て回ればきっとリリースさんにとって
一番の答えがみつかりますよ」
ヒルトとユリエフの言葉に、リリースは虫酸が走る
だが、心のどこかで自由に生きることに憧れを抱いていた
火族として、抱いてはいけない個人の夢
身内に知られれば命はないだろう
だからこそ、無意識に押し殺していた抑制力が氷のように溶けていく
「もし、お前の夢が見つからないっていうなら
俺が力になるから」
「!」
ヒルトはリリースへ右手を差し出し、真剣な眼差しで語る
嘘偽りのないそれに、リリースは震えながらも無意識に手を取ろうとする
ヒルトとユリエフの背後に見慣れた男の姿が目に映り、体が硬直する
「あっ」
漆黒のコートとフードを被った男は確かにリリースを見ている
その存在にヒルトとユリエフは気づいていない
二人はお互いを見つめ合いながら、リリースが何に怯えているのか考えるが男の姿が見えていない状況では検討もつかないのだろう
コートの男の声は聞こえないが、その口の動きで何をしようとしているのかリリースには理解できた
「待って!
お願い・・それは嫌なの!
それだけはっ!」
必死に懇願するリリースの目線を追いながら、ヒルトとユリエフは周囲を見渡すが誰一人として捉えれない
「おい、一体どうしたんだ?」
ヒルトはリリースに近づこうとした時
額に一つ目の呪印が浮かび上がり、血管がはち切れる程浮かび上がる
「ヒルト君!
離れてください!」
ユリエフはヒルトの手を取り、リリースから引き離そうとする
その直後、雄叫びをあげながらリリースの瞳と口は青い炎で燃え盛り、すぐに全身が焼き焦げていく
「なっ?!」
突然のあまりその光景を見続けるしか出来なかったヒルトは
燃え盛る炎がリリースを灰にしているのではなく、別の異形へ姿を変えていっているのがわかった
炎はリリースに闇の魔力を付着させて行き、魔族へ変えていく
真紅の鎧に身を包み、頭部の顳顬からは牙のような突起物が生え、胸部から禍々しく燃え盛る青い炎がともる
「どうして・・魔族に?!」
武器を構えるヒルトとユリエフ
既に意思を無くし暴走状況のリリースは強く踏み込み、一気にヒルトとユリエフを蹴り上げる
「っ!?」
「がはっ!」
柱に叩きつけられ、ヒルトは目眩に襲われる
