第9章 ディオン連邦共和王国
組織へ脱退を伝えた後、承認されるのは早かった
アレックスが組織を出て、ディオン連邦共和国へ向かう中
あの男だけは納得がいかない表情をして立っている
森の入り口で苦虫を噛んだような表情が鮮明に見える
日が沈んだ中、ヘイデンはアレックスを見つめていた
「本気で行くのか、アレックス」
「そうだね、ヘイデン
僕はあの国を・・ジーナを守りたいと思ったんだ」
悲しげな表情を見せながら、アレックスは歩みを止めようとはしなかった
「ーーー償いや、同胞を救う事よりも己の欲を優先するのかアレックス
それでは他の魔族と変わりはしない・・
我々が何故、あの森で君に意志を取り戻すようにしたのか
もう一度考えた方がよい
それに、君1人の力で王女を守るなど不可能に近いぞ」
「僕に意志を取り戻させてくれたのは、僕自身の意志で道を切り開くため。
勿論同胞を助けるための人員補欠もあったと思うが、それは後付けだろう?
償いきれないほど、この手は血で汚れている・・たった1人の少女も救えない僕が組織の役に立つとも思えない。」
「綺麗事を並べないでほしい
結局のところ、君は己の欲を優先するということだ!」
言い合う両者は一歩も引かず、アレックスはそのまま森へ入ろうと
ヘイデンの隣を通り過ぎようとする
だがその瞬間、ヘイデンの背後から突如現れた漆黒の魔人が立ち塞がり
はち切れるほどの筋肉を浮かばせながら殺気を放つ
「ーーーーヘイデン」
暗い森に、静かに雨が降る
雨雫は魔人の体に当たりるが魔人は動こうとはしない
目があるはずの頭部には避けた口と鼻腔らしき穴が2つ
そして闇の呪印が後頭部から全身にかけて入っている
そう、この魔人には目という器官はない
それでもたしかにこちらを睨んでいるような殺気を感じる
ヘイデンはアレックスに目を合わそうとはせず、俯いた状態で目を赤く光らせていた
しばらくの間、ヘイデンと共に行動していたからこそ
その魔人の正体を知っているアレックスは
慎重に話す必要があることを感じた
「・・ヘイデン、これを治めてくれ
僕は君と戦いたくない」
「我もだ。
だが、貴様のように私利私欲で動く者を・・我は嫌う
我が感情を荒ぶればこの魔人も暴走することは知っているな?」