第4章 王馬くんが何か言いたいことがあるようです
彼女が下手に頭が良い分、とてもとても口説きづらい。
思い通りに動いてくれない。
超高校級の総統なのに。
好きな子一人、掌で転がせないなんて。
相当笑えない。
「………。」
案外、実力行使に出た方がいいのかも。
本気でなし崩しにしたいならだけど。
「…ねぇ。亜美ちゃんさー」
『…ん?』
「………。」
オレがキスの経験あるって知った時。
スッゲー嫌そうだった。
なら、その先こそどうなんだろ。
「…昼ご飯、何食べたい?」
『王馬が食べたいものでいいよ』
「ふーん………で?」
『…………………で?』
「さっさと聞き返してよ。もーっ、会話のキャッチボールになってないよ!キー坊に気取られすぎだって!」
『今日はやけに構って欲しいんだね…何食べたいの?』
「亜美ちゃんがいい」
『会話が成り立ってないなぁ。そもそもさっき却下したんだけど』
「ねぇなんで?なんで亜美ちゃん食べたらダメなの、彼氏なんだから押し倒したって噛み付いたって監禁したっていいじゃん!」
『なんか趣味が露呈してるよ…監禁は困るし、噛まれるのは痛そうだし、押し倒されるのもちょっと…』
「ちょっとじゃわかんないって。なんでダメなの?」
『グイグイ来るなぁ…昼からそんなに悶々としてたの?若いなぁ王馬くんは』
「亜美ちゃんは若々しさが足りないよ!」
とりあえず、亜美ちゃんはオレの頭を撫で始めた。
そんな簡単なことじゃ懐柔されたりしない。
してやんない。
「……。」
でも恩恵は余すことなく享受しておこうと思うから異論は唱えない。
手、あったかい。
「…ねぇ」
考えてみれば、いつもいつもオレからキスしてばかりで、彼女はオレに応えてばかり。
亜美ちゃんから求められたことなんて、彼女に近づける口実になったキスを除けば、数える程度しかない。
「……オレのこと欲しいと思わないの?」
『…え?』
「もっとオレを独占したいとかさ。キスして自分のことだけ考えてもらおうとかさ。なんで頭撫でることしかしないの?抱きついても来ないし、クリスマスイブを除いたらデートもオレばっか誘ってるよね」
なんで、と問いかけて言葉を切れば。
彼女は真意を見抜いて、返事を返した。
『…寂しくさせてごめんね。もっと私からも、愛情表現するから』